仕事の手順は簡単だ。
ただ殺せばいい。
それだけのこと。
では、商談はまとまりましたかな
ええ！今後ともご贔屓に！
対象は二人だったな？
ああ、お付きの奴らはほっといて構わん。どうせ一人では何もできん連中だ
へぇ、兎にしては豪奢な巣穴だな
虎の威を借るのは狐だけじゃないって話だ。取引相手のじじいは政界にも繰り出そうとしてるからな。うまく取り入ってあぶく銭をもらおうって腹だろうさ
で、アンタらはそうなる前に潰しておこうってか？
あぁ。あのじじいは手広くやってるから誰に暗殺されても文句は出ねぇし、あの眼鏡には世話になってるんでな
いつも通り頼むぜ、夜露さん
ああ
……っと
仕事の手順は簡単だ。
ただ殺せばいい。
それだけのこと。
だが。ただ刃物や鈍器を振り回して終わり、というのは生産的ではない。
殺さなくていいものは殺さない。
壊さなくていいものは壊さない。
これを完璧にできてこそ、プロと呼ばれる。
……さあ、耳を澄ませようか
スナイパーに必要な要素は何か？
狙撃の技術
視力
そんなのは当たり前のもんだ。
俺のスナイプに必要なのは
想像力
空間把握能力
そして、空気を読む
これだけで足りる。
標的の部屋の間取りは必要ない。
監視カメラから数秒前の写真を送ってもらい、事前に用意させた盗聴器でフロアの空気を感じる。
そこから、俺は空間を掌握していく。
時に、姪は元気にしているかね？
もちろんですとも！今日会長にお会いすると言ったら、よろしくと伝えてほしいと！
子供は、今いくつだったかな？
娘ですか？もう１０歳になりました。どうしてもついてきたいと言うので、今は車で留守番してもらってます
よければ、お会いになりますか？少々生意気に育ってしましましたが、根はとてもいい娘なんですよ
マフィア若頭の子供の根がいい、か……実に面白い冗談だな
FIRE！
…………
か、会長？
…………
か、会長が撃たれたーー！！敵襲だーー！！
若、隠れてくだせえ！敵は切れ者のスナイパーらしいですぜ！！
あ、ああ！！ここは任せたぞ！！
そして、若頭は10歩ほど離れたドアに向かって走る。
しかし、その空気すら掌握している――――
若頭ーーーー！！
仕事は終わったかい、夜露？
ああ。金はいつもの口座で構わねえ
どうだ？ いい加減うちの組の専属スナイパーにならないか？ 報酬は今の倍出すぜ？
だから、いつも言ってるだろ。俺はノラが性に合ってるんだよ
ん？
どうかしたのか？
悪いな、急用ができた。また頼むわ
尾行するなら、せめて足音を消すことだな。こんな雨の中、人気のない夜の街で足音を立てるのはただのバカだぜ？
……それは、尾行するつもりはなかったから
言うじゃないか。お前みたいな小娘が俺に何の用だ？ 援交なら他を当たれ。俺はガキに興味ないからな
……アナタが背負ってるもの、ライフルだよね？
…………だったら？
お願いします。私に狙撃を、殺しを教えてください！
ざけんな帰れ。ガキに興味ないって言ってんだろ
敵をうちたいんです！ 父を殺した奴を、この手で撃ち殺したい！
っあー分かった分かった！うるせえから一晩だけ遊んでやる！だから黙ってついてこい！
