西暦1993年…火星
西暦1993年…火星
地球があんなに小さく…
…信じられるかい?ペギー
俺たちは今、火星にいるんだよ…
ええっ…信じられない!
今の周期だと、地球から1億キロも離れているのよ
すごいことだわ…
我々、ユニコーン候補者の最終訓練による滞在予定は90日…
…その…き・君はどうするんだい?
?
どうって?
訓練が終わったら、さ…
俺は、ユニコーン候補を辞退して、通常の地球基地勤務を志願するつもりなんだ
…
そう…
俺は…ユニコーンの任務に共感できない!
これは、紛れも無い…侵略だよ…ペギー
………
それに、危険過ぎる!現に、これまでも…
分かった!
あなたが決めたのなら、私は従うわ
え…
い・いいのかい?
…だって君はあれほど…
うふふ!
なぁに?変な人
あなたが言い出したんじゃない
し・しかし…それでは君のお父さんが…
…だから、もういいのよサイ
私の過去も…執念も…今では感謝してるの…
だって、お陰でこうしてあなたに、出逢えたんだから
愛してるわ…サイ
…ああ
俺もだよ…
ペギー
「ありがとう…ペギー」
『地球に戻ったら、一緒になろう…』
俺たちは永遠の愛を誓ったんだ…
頭上に地球が煌めく、夜…
名も無い、この…
小さな、火星の丘の上で…
マリカ@りぴーと
第七話『マリカ@まーがれっと』
ラー様が、素体を離脱してから一分ほど経過した頃…
ディザールさんは、外にいるユニコーン達を相手するため、単身飛び込んで行き…
私とマリカちゃんは建物内に残り、転送装置を護る役割となりました
ディザールさんは軽やかに着地すると、瞬きする間もなく敵へ襲いかかって行きました
敵もマシンガンで反撃してきましたが、弾丸はディザールさんの目の前で流線状に方向を変え、かすりもしません
これが、重力兵器と言われる『ナハム・アハト』のチカラなのでしょう
グワァッ!
ディザールさんは、十数名はいる隊員達を、目に見えない武器で次々になぎ倒すと、由比一人に狙いを定め、渾身の力を込めた強烈な突きを見舞ったのでした
へっ!
由比も信じられない反応でこれを躱す
続けてユニコーン達は、ディザールさんを再度、発砲しようと隊形を組み直しましたが、由比は片手を上げると、これを制した
両者、西部劇さながらのにらみ合いとなり、しばらく静止したのでした…
ぃやっと会えたよ
愛しいしと…ってか
久しいな…
才一郎
お前らが、あんまし逃げまわっからよぉ
探しちゃったじゃん
隊長!危険です!
…ここは、我々が…!
アホ!
下がってろ!おめぇらじゃ話しになんねぇよ!
…うう
来い!才一郎!
…うっぜぇ…
人のナリして、何イキってんだぁ!?
コラッ!
この火星人野郎!
望み通り、ぶっ殺してやんよ!
ディーザールさんは、再びナハムアハトで攻撃を開始する
はぁっ!
ギヒィィ
チッ!
どけ!ノロマども!
お前らはガキの面倒見て来いや!
は…
はっ!
…させん!!
おいおい!
どっこ見てんだぁ?ゴラァ!
グッ!
由比の鋭い蹴りがディザールさんの肩をかすめる
てめぇの相手は、俺だっつってんだるぉが!
空気読めや!
おい!
ガキを殺ったら、ちゃん…と魂、回収すんだぞ!
はっ!
隊員達は指示を受けると、建物の中へ入って行きました
へへ
これで、邪魔者はいなくなったぜ
………
………
よぉ…
憶えってか?クソ野郎!
…………
おいおい
よもや、忘れた…何てこたぁねぇよな…?
あの時…
27年前の火星で…
てめぇらが虫けらみたいに殺した
女の事をよぉ!
次々に、一階フロアへ隊員達が入ってくる
人数は九名…若干減っているものの、特殊部隊のような格好のためか、思わず両手を挙げてしまいそうなほどの圧力がありました
マリカちゃん!
や・奴らが!
私たちは、だだっ広いフロアにある何本かの支柱の内の一本に身を隠していました
隊員たちも罠の可能性を考えたのか、一気には来ない様子です
落ち着いて!チカさん!
これで何とかするから!
マリカちゃんは、そう言うと、先ほどディザールさんから受けっとた小さな機械を私に見せました
な・なにこれ?
シールドだよ!
シールド?
盾みたいなもの?
そ!
使い捨てだけどね!
お・大人しくしろ!
抵抗すれば、撃つ!
フロント隊員の一人が、そう牽制してきた
報告ではもう一人マーシアンがいるはずだ!
それに罠も…!
いいな?注意しろ!
どうやら、こちらの情報はある程度、筒抜けの様です
かかってきなさい!
僕たち!
お姉さんが相手してあげるわ!(火星語)
突然、マリカちゃんは大人びた言葉で敵を挑発しました
チッ!
火星の言葉かよ!
あんまりわかんねーなぁ…
襲ってこい?子供?達?
年上の女が相手にする?
…要はかかってこいって言ってるんだろ?
さすがはユニコーン
隊員も火星の言葉を多少は理解できる様です
ジリジリ寄ってこられたら、かえってやり辛いわね!
んじゃ!いっちょ、こっちから仕掛けちゃいますかぁ!
な…!バ・バカじゃない!
刺激しない方がいいに決まってるでしょ!(小声)
まっ、見てなさいって!
以逸待労(いいつたいろう)よ!
え!?
何それ?…火星のことわざか何か?
シールドだって、使い方次第よ!
そう言うと、マリカちゃんはシールドを展開
出力を最大にして形状を変化させると、その先端がユニコーン達に向けて伸びていった
…すると
ギィヤァァァッ!!
うがあああっ!!
まるで感電した様に、隊員達は痙攣しながら背後に少し弾かれた様に倒れました
あははは!
そーら見なさい!おバカさん達!
(ムッカァァ)
ちっくしょう!
アイツ!バカとか言いやがった!
…なめやがって
さっきの、保育園で殺しまくったんだ!
もう一人や二人殺したからって何だってんだ!
そうさ!かまうもんか!
……!!
…え?
保育園?
私は愕然としました…
ちょっと!待ってよ!
…ほ・保育園って、まさか『てんせい保育園』のことなの?
ああ!そうさ!
そのガキ一人のために、皆殺しだったぜ!
殺したって
マ・マジで言ってんの?
信じられない!
ひどい!
ひどすぎる!
何てことすんのよ!
この人殺し!
バカじゃないの!?
………
マリカちゃんも流石に堪えた様子で、うなだれていました
みんな…
ごめん…全部、私のせいだ…
もっと冷静に考えれば良かった
…こうなることくらい予見できたハズなのに…
ごめんなさい…ごめんなさい…
くっ…!!
だ・黙れっ!
隊員は私たちの反応を見て、良心が痛んだのでしょう…
狼狽えながら言い…そして、その感情を振り払うように発砲しました
黙れよぉぉぉぉっ!!!
きゃああああっ!!!
…!
チカ伏せて!
マリカちゃんは、シールドを適正の出力に戻すと、本来の目的通りの使用しました
クソォォォォ!
どいつもこいつも!俺をバカにしやがってぇぇっ!!
撃てぇ、撃てぇぇぇっ!
フロント隊員の突然の発砲に、張り詰めた緊張の糸が切れたのか、堰を切ったように他の隊員達もつられ撃ってきました
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇっ!!
きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!
バカ!
考えもなしに発砲するな!
やめろ!やめるんだ!
ええい!全員、打ち方やめぇぇぇぇ!!
それでも、銃撃は止まりせん…
完全にタガが外れた状態の様です
いかん!
統制がとれん…!
とうとう、始まってしまった戦闘…
既に私は、完全に現実から乖離しており、自分の体がどこにあるのかわからないほどでした…
だけど、今の状況よりも、保育園襲撃の事実の方が重く…
子供達の顔を無作為に思い浮かべては、まだ受け入れることが出来ずに…
ずっと…涙が溢れていました
第七話 マリカ@まーがれっと
終