あれは小学2年生の時だった。
私たちはまだ、序列の恐ろしさなんて知らなくて、ただただ、その時その時を生きていたんだ。
あれは小学2年生の時だった。
私たちはまだ、序列の恐ろしさなんて知らなくて、ただただ、その時その時を生きていたんだ。
悠美!
学校へ行く途中で必ず碧は待っていてくれていた。
今日もいつものように、碧は先に来ていて、私を待っていた。
小さな袋を持って。
おはよう、碧
おはよう!
今日はクリスマスでしょ!
そうねー。
碧はサンタさんまだ信じてるの?
信じてないよー。
うちのクラスで信じてる女子はいないと思うよ
じゃあ、なんでそんなに楽しそうなのよ
それはねー
碧はにやにやしながら小さな紙袋を渡してきた。
はいこれ!
え?
碧サンタだよー
くれるの?
うん。
悠美はあたしの大切な人だもん
……ありがとう
いーえ
あ、あたしお返し用意してないよ?
いらないよ。あたしにとっては悠美といれることがプレゼント!
なにそれー
それが小学2年生の頃の話だった。
序列を知った小学3年生のクリスマス。
碧は私にプレゼントをくれなかった。
あたしは学校が終わって碧の家へ行った。
今年はプレゼントないんだ
いいよ、いらないよ
ごめんね。
あたし、学校にいけない
学校も来なくていいよ。
あたしが毎日お家に来てあげる
だから、碧、もう少しだけ耐えて
小学4年生のクリスマス。
碧はまた私にクリスマスプレゼントをくれた。
2年生の時と同じように、登校中だった。
今年は、ちゃんとプレゼント買ってきたよ!
そうなのぉ?
うれしぃ!
……だから、もういいよ。
あたしと一緒にいてくれなくていい
だめ、碧はあたしと一緒にいるの
中学2年生のクリスマス。
碧は知らない先輩と一緒に学校に行っていた。
プレゼントはお昼休みに貰えた。
悠美ぃ!プレゼントだよぉ?
ありがとぉ!
ふふ、喜んでもらえてよかったぁ!
碧がくれるものなら何でもうれしいよぉ
ほんとぉ?
うん。碧がくれるものならなーんでも!
中学3年生の時、碧はクリスマスのプレゼントをまっすぐに持ってきた。
毎年ありがとう!
ううん。
あたしはぁ、悠美が喜んでくれるならぁ、なんでもするよぉ
うれしぃ!碧だけはずぅーっと、大切にするねぇ?
碧を言葉や行動で縛りつけながら、高校まで来た。
もう後戻りはできない。
碧と楽しいクリスマスはいつからか、互いを縛る儀式になっていったんだ。