2025年4月10日(木)
12:50 PM
2025年4月10日(木)
12:50 PM
キョロ
キョロ
校門付近まで出た少女は
あたりを見回す。
あわよくば最短距離で探し出したかった。
まぁ、そう都合よくいかないか。
しかし、
目当てのものは見当たらなかった。
仕方ない、担ぎ上げられたところまで戻るか。
少女は、人目につかないよう
周りを気にしながら
校外へと駆け出していった。
……ない。
地面をくまなく探しながら
食パンが宙を舞った場所まで戻った少女。
しかし、道中にそれはなかった。
いやぁ……ヤバイな……。
交番に届けられたら、
くすのき園に結び付けられ再び
クシナダの下に戻る……。
そうなると、この近辺が
ヤツラの監視対象になってしまう。
せっかく、少し馴染んできたのに。
……また捨てるのか……。
『あなたにも戻る場所があるの。
そう思ってくれるだけでいいわ。』
はっ！！！
ダメだダメだ！
少女は首を大きく振り
自身の消極的な考えを打ち消す。
絶対に探し出す！
必ずある！
それは少女が
挫けそうな気持ちを
入れ直した時だった。
ヒッ！
背後から肩を掴む手に
少女はとっさに声を押し殺す。
そー……。
そして、恐る恐る後ろを振り向く。
何を探してるの？
住吉さん。
オ・マ・エ・かー！
住吉さん、『またお前か』
みたいな顔をしてるね。
そんな事ないよ！
ニッコリ
クァァァ……
思いのほか鋭いな……。
で、オマエはなんでここにいるんだ？
なんか、住吉さんが
困っているみたいだったから
僕、住吉さんの力になりたくて。
＼キッパリ／
結構です。
いない方が助かるんだよぅ
早くいなくなってくれよぅ
しかし、少年は思いのほか
強い精神力を持っていた。
それはそうとさ、ここに来るまでにさ、
なんかヘンな物が
木の枝に引っかかってたんだ。
そう言って少年は
少女にあるものを見せた。
くすのき園関連報告書
！！！
……それだ。
少女は気の抜けたような声を出した。
え……。
もしかして、住吉さんこれを探していたの？
そ、そうだよ！
悪いか！
間抜けな自身を戒めるかのように
少年に強がる少女。
よ……
良かったぁー！
住吉さんの探してたものが見つかって！
しかし、少年は
屈託のない無垢な笑顔を
少女に見せた。
ドキン！
少女は
その笑顔が眩しくて
見ていられなかった。
くすのき園関連報告書
少女は少年の手の中から
乱暴に書類を奪うと
あ、ありがとな。
ともかく、助かったよ。
とだけ言って、
走って去っていった。
……すこしだけ。
残された少年は独りごちる。
少しだけ住吉さんに
近づけた気がする。
少年は遠巻きに聞こえてくる
学校の予鈴が
自身の運命の鐘のように
感じていた。
あ！授業が
始まってる！！！
2025年4月10日(木)
01:30 PM
入れ。
お呼びですか、『お母さん』。
ヒルトンイーグル、
くすのき園に関与してくるヤツを
全て洗え。
くすのき園……ですって？
飄々とした細身の男は
些か不満げな表情で
管理職の男に聞き返した。
ああ。
ヴァニラキャンディ案件は
ブラボーフェスティバル担当じゃ
ないんですかい？
余計な詮索は不要だ、
ヒルトンイーグル。
オマエはオマエで自分の能力を活かせ。
……アイアイサー。
まあ、ソッチは俺の方が
向いていらぁね。
行ったか。
一人になった管理職の男は
タバコに火をつけ一息入れる。
ブラボーフェスティバルは
かわいい顔して何考えているか
わかりゃしねぇ。
用心に越したことはない。
さぁて、
なーにが
出てきますかねぇ。
……ふん。
失くした物は。
つづく
