例えばーーだ。
私がお前の前世だと言ったら、お前は信じるか?

ええっ?

そんなはずない。

だってあなたは僕と、同じ時間に生きてる!

そうだな。

だが、同じ時間軸を生きるように――
死よりも過去に生まれ変わってはいけないと、誰が決めたのだ?

もう時間だ、起きろ
お前は寝起きが良いからな。同居人に不審がられても面倒だ

待ってください、僕はまだ、貴方と大切な話を続けないといけな――

――大丈夫?うなされてたみたいだけど

目の前に沙月の顔。

沙月…………

僕…………

朝は入ってこないでって言ったよね?

だって何か聞こえてきた気がしたんだもん

とりあえず出てって

えっと、あのね? 悪気は……

とりあえず出てって

……ごめんなさい

最近、奇妙な夢を見る。





内容ははっきりと覚えているのに、それを話す人の顔も仕草も、声さえもろくに思い出せない。人なのかすら分からない。

その人に僕は――

今日は……
「霊深度を無駄に強めないために何をすべきか」、
「どんなものでも頭ごなしに否定しないこと」……

講義を、受けているのだった。

夢の中で言われたことは何故か、守らなければいけないような気がする。



今まで僕が取った行動の幾つかは夢の声に従ったものなんだけど、沙月には「グッジョブ!」って言われてるから、きっと正しいんだろうな……

なになに? もしかしてこの前の「講義」復習してるの?

あー……そんなところ

そういえば、こっちからも授業受けてるんだよな……

よろしい!

満面の笑みに、今日もまた僕は何も言えなくなる。

ゼロ 「会えぬ人」

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