わたしね、昔から魂が見えるのよ――。

物心ついた時から、周りの人の心臓あたりにぼやっとした光が見えたの。

初めは何なのだろうと思っていたけど、小学生の時祖父が亡くなって、その時祖父から光が抜けていくのを見て、あれが命だって確信したのよ。

命――そう、魂ね。

だからといって特に何もなかったんだけど、ある日わたしは気付いてしまった。

中学生の時飼っていたペットが亡くなったとき、祖父の時みたいに、光が抜けていくのが見えたの。

わたし、思わずそれに手をのばしたの――そうしたらね、つかめたのよ。

わたしはそれを持って外へ出た。そしてその辺を歩く野良猫を見かけて、どうしてあんなこと思い付いたかわからないけど、生きている猫の魂に触れてみたの。

――魂は簡単に抜けたわ。

猫は、動かなくなった。

代わりに飼っていたペットの魂を入れた。

そうしたらまた猫が動き出した。

でも、わたしにはわかる。これはさっきの野良猫なんかじゃない、わたしのペットなんだって。

まずこれが、わたしが転生を知ったきっかけ

本当に、そんなことが……

それでね、わたしはこの経験をヒントにとある小説を書いたのよ

…『勇者の大冒険!』?

そうそう。あなた賢いわね。
児童文学なんだけど、そこそこ売れたのよ

作家生活を送っていたある日、一通の手紙が届いたの。

いつものようにファンレターかしらと思っていたら、そうじゃなかった。


――『転生の依頼書』だったのよ。


日時と場所が書いてあってね、もし協力いただけるならそこに来て欲しいというものだった。

もちろんわたしは行ったわ。協力しようというより、単純に面白そうだったから。

…ええ。そうよ。依頼主は、大内桜子と城ヶ崎麗花。

話を聞いてみるとね――

わたしたち、もうここにいるのが嫌で

でも、わたしたちが突然いなくなると面倒なのよ。特にわたしは名家のお嬢様だから

あなたの本を読んで、テンセイ――『転生』というのを知ったの。それをぜひわたしたちに教えて欲しいの

――誰かに生きるのを、任せたいの。誰でも構わない。報酬なら、わたしがいくらでも出せるわ

最初ふざけているのかと思ったけど、どうやら本気みたいらしくてね。

ちょっとしたお小遣いがもらえるならいいかしらと思って引き受けたのよ。

丁度最近わたしに気がありそうな男が一人いたし、そいつをとりあえず転生させるとして、もう一人をどうしようかと思っていたんだけど、家に帰る途中でね、わたし偶然にも見かけたのよ。

――事故に遭って亡くなってしまったあなたに。

……!

あなたたちは、運が悪かったってだけのことなのよ。――いや、良かった、のかしらね?

女子小学生になれたんですもの

――っ。

転生の流れはよーくわかった

…じゃ、桜子と麗花の魂は今お前が持ってるんだよな!?

――まぁ、一応あるけど…

だったら今すぐ戻してくれ!それか、桜子と話が出来るなら、少し話もしたい

あなたたちの身体はもうないから、二人に身体返しちゃったら、あなたたち死ぬだけよ

元々そのまま死ぬはずだったんだ。今更死ぬどうこう気にしねぇよ

…………。

どうなんだ?やってくれるのか?

んーいいけど。どうかな~、うまくいくか

…?

では、条件として一つ

そこの青髪ちゃんの魂を抜かせてもらいます♪

――えっ

 品川は俺らを一瞥して、にやにやと笑っていた。

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