ケーキをおいしく頂いたところで、俺はランドセルから例の本を取り出した。
 
 本を床に広げ、俺たちも床に尻をつけ、隣同士になり本を覗き込む。

タイトルは――『勇者の大冒険!』
……普通に物語っぽいな

だな。桜子、読んでいけ

うん。ええと――

ここはハジマリの村。

今日もへいわなこの村で、あたらしいいのちが生まれました。

げんきなげんきな男の子です。

この辺は飛ばしてもいいだろう。肝心なのは『転生』の部分だ

そうか。たぶんラストの方だよな――

「なぜだ……なぜたおれない」

勇者もそのなかまたちも、もうげんかいがちかづいていました。

「不老不死のわたしにかてるとおもうか!勇者よ、ここでくたばるがいい!!」

「もう…ここまでか…」

勇者があきらめかけ、目をつむろうとしたそのときです。

「あきらめてはなりません!勇者まだ…手はあります!!」

そうさけんだのはまほうつかいでした。

「今から魔王をきょうせいてきにテンセイさせます!」

「テンセイ…?おまえまさかっ」

「このまほうだけはつかうなっていわれていましたけれどここまできたらしかたありません」

「やめろっ!」



「%△$#&●!!!」




まほうつかいはじゅもんをとなえると、魔王はとつぜんでんちのきれたおもちゃのようにうごかなくなりました。

「わたしのタマシイとひきかえに、魔王のタマシイをわたしのからだにテンセイさせます。

わたしのからだとなった魔王は、不老不死のチカラをうしないます。

そのときをねらって、しっかりたおしてくださいね」


「それじゃ魔王はたおせてもおまえは――」

「……勇者。


いままでとてもたのしかったです。ありがとう」


「――おいっ…!」

勇者はまほうつかいのうでをつかみました。

「…ん。なんだこのすがたは……」

しかし、もうそれは、まほうつかいではなく。




「…う、うわあああああああああああッッッ!!」




勇者はテンセイした魔王のくびめがけて、けんをふりかぶり――。

「――ッ」

魔王はさいごにのこすことばもなく、この世からさりました。

こうして、ついに勇者は魔王に打ち勝つことができたのです――。

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