単刀直入に言うと、オレこと緒多 悠十(オダ ユウト)は一般的とは言い難い状況下にある。
第一に。
オレには未来を見ることができる。
先ほどのように何秒か先の未来を先んじて経験し、未来を変える。
ただし、それは無償というわけにもいかない。
未来を見るためには、それ相応の《記憶》という代価が必要となる。
未来を得るために過去を捨てる。
そういう取引なのだ。
そしてそこで失われた記憶が戻ることはない。
もし、その記憶の中に含まれる情報が何らかの物的証拠として残っていればもう一度その証拠から情報を得ることは可能であるが、その情報を得たときの状況などをそのままの記憶として取り戻すことはできない。
さらに厄介なことにどの記憶を失うかどうかという決定権はオレの管理下に置かれていない上、極め付きには先ほどのようにオレの同意なしに能力が行使されるという始末である。
ここまでくると、使いこなしているというよりは振り回されていると形容したほうがおそらく正しいのだろう。
それに、オレはこの能力を使うこと自体、快くは思っていない。