以前、僕が昔付き合っていた彼女へのアピールの為にトガった部分を幾らか見せていたことがあった。と、言ったことがあっただろう? 勿論今は、心を入れなおしているのだが、そのイメージが強い人がいるのもまた事実で……。

いらっしゃいまー……あ!

レストランの店員

……!

 噂をすれば。そんなタイミング通りの出会いだった。

 あの頃の俺は、実におこがましく、他人、特に店員へのアタリが強かった。それを彼女に見せればかっこよく思われるって思ってたからな。

 彼女もそうだった。当時、俺が横柄な態度をしてしまったレストランの店員だった。

 やっぱり、帰られるのかな。つい彼女の後姿を目で追ってしまう。

レストランの店員

今日は肉と野菜かしらね

 しかし、予想とは反して彼女は気にも留めず買い物をし始めた。俺のことをもう忘れている……わけないよなぁ。白い狼なんてそうそういないし。じゃあ、今日だけはお買い物をしていってくれるってことだろうか。有難い話だ。

赤ずきん

狼さん、あの女性のことよく見てるね、好きなの?

いや、そう言うんじゃないんだ。昔、ちょっと失礼なことしちゃってね……

赤ずきん

へぇ~私が狼さんに、このボケナス!! って言う感じ?

なんでわざわざ例えちゃうの……? 流石にそれは言わないけどさ

赤ずきん

じゃあ、きっと大丈夫だよ

どうして?

赤ずきん

だって、問題は、今! 頑張っているかでしょ? 今頑張ってる姿を、あの人に見せてきなよ!!

……うん、有難う。やってみるよ

バイト君

そういや、札付きの悪って有名な狼って、一体どんな悪やってたんですかね?

店長

んー。ピンポンダッシュとか?

 赤ずきんのレジに二人並んでいる。俺が急いで駆けつけると、そこにいたのは、先の程の彼女だった。

お次お待ちのお客様、こちらのレジでどうぞ!

レストランの店員

……大丈夫です

 グサッ。胸がえぐられるような、冷たい表情と一言だった。無論、悪いのは俺なんだけど。

……申し訳ございません

赤ずきん

……

 謝ると、お客様は知らんふりをするかのように顔をそらした。

 すると、一人目のレジを終えた赤ずきんが、とっさにかごを立て、レジ休止の看板も立てた。

赤ずきん

ごめん狼さん、今どうしてもお手洗い行きたいの! お客様も大変申し訳ございません、お隣のレジまでお運び致しますね!!

レストランの店員

あ、あの……

 こんなに険悪なムードなのに、何で俺なんかに託したんだろう。普段あんな素直にお手洗いとかだって言わないのに……。

 なんてことを一瞬のうちに考えながら、俺はかごの商品に手をやった。

……あの、以前は大変失礼いたしました

レストランの店員

何のことですか?

以前、あなたには横柄な態度を取ってしまって、何度もすみませんって言わせてしまいました

レストランの店員

覚えていたのね

だから……

すみませんでした!!

レストランの店員

……

レストランの店員

……あの子の言ってた通り、優しいお兄ちゃんなのね

……え?

レストランの店員

赤ずきんちゃんが戻ってきたら伝えておいて、娘にスタンプカードと商品を有難うございますって

あ、貴方! あの女の子の……

レストランの店員

貴方のところにも変わった人が来るかもしれないけれど、頑張ってね

……!

は、はい!!

 突然赤ずきんがいなくなってヒヤヒヤしちゃったけど、何とか彼女に誠意を見せることが出来て良かったです!!

28・向き合え! スーパー葛藤

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