小学四年生の時、授業参観で自分の将来の夢を発表するというものがあった。


 みんな小学生ということもあり、内容としてはあまりに非現実だ。


『スーパーヒーロー』


『テレビゲームを作る人』


『ポ〇モン』


『大統領』


『猫ちゃん』




 




 次々に出てくる珍回答に親たちはクスクス笑っていたが、俺は一ミリも頬を緩めずに自分の番を待っていた。


 俺は本気だった。


 人を笑わすのは好きだが、別に面白い回答をしたい訳ではない。











先生

みんな将来が楽しみですね!

先生

じゃあ次は……

神谷ユウキくん!

ユウキ

はい!










ついにこの時が来た……







俺が将来なりたいもの、今この瞬間に……

















あの娘に向けて全力で……!









神谷くん……、頑張って!
















ユウキ

は!?

ユウキ

ひ、髭剃りです!!!!!









































先生

……

ユウキ

い、いや……

えっと……

これは間違えで……

クスクス

ユウキ

ど、どうだ!

大人でワイルドっしょ!

アハハはははははははははははははははハハハハハハハハハ母母歯母歯は母歯は母派











俺は本当に『髭剃り』なんかになりたかったのか?









ユウキ

は!

プリス

あ、目覚められましたね

気分は悪くないですか?

ユウキ

あ、ええ大丈夫です

ユウキ

俺、寝てたんすか?

グランド

俺が話をしている時に寝落ちとは良い度胸だな小僧!

プリス

まあまあグランド、彼はこの世界に来たばかりで疲れているのです

グランド

はあ……

プリス

ところでその・・・・・・、『髭剃り』とはなんでしょうか?

ユウキ

帰ります、さようなら

グランド

俺たち『男』には無くてはならないワイルドなアイテムですよ

プリス

ほうほう、つまりユウキさんはワイルドな男を目指していると?

ユウキ

あのー俺

寝言で何か言いましたかね?

プリス

『俺は髭剃りになる!』と……

ユウキ

もういいです、この世界の説明をお願いします

プリス

あ、そうですね

ではお教えいたしますね









まず、この世界に『ルール(規則)』というものは存在しません。


皆自由に生き、人生を応謳歌しています。





ユウキ

これでよく国が繁栄してるよね

プリス

それでも皆さんは国のために一生懸命働いてくれていますね

グランド

ただ単純に『誰かに美味しい食べ物を食べさせたい』とか『国の繁栄に貢献したい』と、そういう善の心だけでこの国は廻っているんだ

ユウキ

人の心ね……








この世界の空気を吸い続けているとある『能力』が覚醒します。






ユウキ

の、能力……?

プリス

私たち元々の住人は当たり前に使える『能力』ですが、別の世界から来られた方々も徐々に覚醒されているようです

プリス

例えば私は、『時を操る力』がありますね

ユウキ

さらっといきなりチート来たなこれ

反則っしょ

プリス

別に何かと戦う訳ではないですからね、昔は竜(ドラゴン)とかもいたのですが……

ユウキ

いたのですが?

グランド

姫様と我々『四賢人』の力で一掃した

ユウキ

姫様だけで余裕っしょ……

ユウキ

四賢人って?

グランド

四賢人については自分で調べろ、長くなるからな

プリス

そして最後にこちら!










自分だけの『通り名』を手に入れよう!





ユウキ

通り名?

グランド

最近は特にそうだが、この世界の住人はやたら強い能力者や活躍する者に『通り名』をつけて格付けをしようとするんだ

プリス

もうこれ、この世界の文化よね

ユウキ

例えば?

プリス

私の『姫』とか

グランド

我ら『四賢人』もそうだ

ユウキ

やっぱり人間って格差社会が好きなんだな……





















第二章 終



















第二章『髭剃り? ワイルd』

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