バレンタイン関係のお仕事を終えて、帰りの準備を進めていたGARNET PARTYの面々。
バレンタイン関係のお仕事を終えて、帰りの準備を進めていたGARNET PARTYの面々。
留奈ちゃん、お疲れさまー! いやー疲れたねー! 着替え終わったかな?
留奈の着替えが珍しく遅いから心配になって、ひかりは更衣室の前に様子を見に来たのだが……。
……
かえちゃん? どうしたの?
一足先に来ていた楓が、留奈のいる更衣室に入れず、立ち往生していた。
よく聞くと、ドアの向こうからは留奈の声が聞こえてくる。
ふ、ふんっ、感謝しなさいよ。現役のアイドルからチョコレートを貰えるだなんて光栄でしょ?
……
勘違いしないでくれる? これは義理も義理、大義理よ! 決して変な意味じゃないんだから!
ただこれは、いつもお世話になっているお礼。留奈は返して当然の恩を返しているだけなの。分かった?
るなさんは、1人でなにをやっているのでしょう
あー……
(留奈ちゃん、もう2週間くらい前から悩んでるなぁ……)
あはは……。明日はバレンタインだもんね
……? ちょこを渡しているのですか? ぷろでゅーさーは、ここにはいませんが
楓は、きょとん小首をかしげていた。
ううん。チョコを渡す予行練習をしてるんじゃないかな……? ……留奈ちゃんはあの性格だから。素直にプレゼントを渡すなんて、きっとそれだけで一大事なんだよ
……ふつうにわたせば、よいとおもうのですが
ぜんぜんわかりません
無表情のまま、眉をしげしげとしかめる楓。
(かえちゃんはこの顔もかわいいなぁ。うん……でも、かえちゃんはいつも誰より素直だもんね)
い、いい、い、い、いつもありがとう……。だ、ダメね、素直に言えない
い、いつも――ありがっ……あぁ、もうっ……!
(留奈ちゃん、頑張れー)
友達として、チームメイトとして、応援しようね、と、ひかりは楓に優しく笑いかけた。
みんなごめんね! 先に集まってもらってて! 急いだんだけどなかなか解放されなくて……
今日は2月14日
事務所は雰囲気は、いつもと大きく違っていた。
プロデューサー? おかえりなさい! えへへ
プロさん、待ってたよー! ね? かえちゃん
まちかねました
そ、空子たち? どうしたんだ?
えへへ
空子はいつになく言葉を濁して、もじもじと後ろ手を組んだままだ。
……何かを、隠しているのか?
はいっ、どうぞ、プロデューサー! チョコレートですっ! いつもありがとうございます!
バレンタイン? あ、あぁ! そうだった! ありがとう空子
あぁ。昨日もGARNET PARTYとバレンタイン関連のイベントをこなしてきたばかりじゃないか。
まさかプライベートでチョコをもらえるだなんて。
仕事として考えすぎていたせいで、自分にはまるで無関係なイベントだと思っていた。
私とかえちゃんからは、抹茶味のチョコレートだよ! てっへへ
チョコのあじは、わたしがえらびました
こそこそ
(みんなでプロさんにチョコを渡して、留奈ちゃんが渡しやすい流れを作ろう……! ね? かえちゃん)
(はい、まかせてください)
ん? 何か言った? でも本当ありがとう
いや……やっぱり心のこもったプレゼントは嬉しいな……。
あげるほうも嬉しいのか、なんだかみんな、ニコニコした表情で僕のことを迎えてくれている。
はーい、プロデューサー、千乃のところに来て欲しいなぁ?
えへへ。一緒にたべよー? とっても甘いんだよ
ダイニングセットに腰掛けていた千乃が、ふんわりした手つきで手招きをしてくる。
やけに上機嫌だ。
思わず目を向けたテーブルの上に置かれているチョコは、まさしく文字の通り山盛りだ。甘い物好きの千乃にとっては天国なのだろう。
こんなにたくさんのチョコ、どうしたの?
……あ、それ……。私のです
学校で…その、もらったのが余っちゃって
私がもらったものだし、頑張って食べてたんですけど、どうしても無理で
みんなで食べてって渡されたやつだけ、持ってきました
話を聞く限り、これで全部じゃないみたいだから驚きだ。
でも唯は女子人気が高いし、女子からバレンタインチョコをたくさんもらってしまうのも頷ける。
やけに決まりが悪そうにしているけれど、別に恥ずかしがることもないのに……。
千乃はチョコが美味しいから満足です
それとねプロデューサー? 千乃からは、あれあげるね
チョコにはむはむとくわえながら、千乃は邪気のない笑顔でソファーのほうを指さす。
チョコのオブジェだった。
ものすごい大きくて、存在感がすごい。深海魚みたいなフォルムだ。明らかに手作りだと分かる。
ありがとう……よく見たら『タイトル:プロデューサーの羽ばたき』ってプレートがついてるね……羽ばたいてるんだね……
わ、私からも……あります。プロデューサーにはあげなくちゃと思って……手作り
そう言って唯が、目を軽くそらしながら、カバンから包みを取り出す。
正直、料理が苦手な唯の手作りという言葉に一抹の不安は覚えるものの、気持ちはとても嬉しい。
あぁ、唯もありがとう
はい。ただ、自分で味見はしたし、ずっと気をつけたんですけど……食べるとき、一応気をつけてください。その
その?
包丁の破へ――
――プロデューサーーー!
聞いてください! 今日はバレンタインデー?という特別な日なのだそうです!!
ちょっとまって!? 今何か唯が大事なことを言っていたから!
つかさはまるで周りが見えていないようで、頬を真っ赤に染め興奮した様子で、僕に詰め寄ってきた。
こんな素敵な1日があることを知らずにいただなんて、わたくし、一生の不覚です!
プロデューサーに愛を伝えるチャンスだというのに!
ぐい、ぐい、と詰め寄られて身体がくっついてしまいそうだ。
……つ、つかさちゃんが持ってきたチョコ、す、すごいね……!
るなさん、だいじょうぶでしょうか…
傍らでは、ひかりと楓が心配げに、会議室につながるドアを見つめていた。
ふぅ……いよいよね。落ち着くのよ留奈。チョコを渡すくらい簡単じゃない
(丁寧にラッピングしたこのチョコレート)
(ふふ、我ながら素敵な包装じゃない。喜ぶ顔が目に浮かぶわ)
【留奈】
(さあ、覚悟を決めて深呼吸……行くわよ!)
――ガチャ
ねえ聞いて、留奈からも――
プロデューサー! これを受け取ってください! 本命チョコと呼ばれる銘柄を揃えました!
みなさんも、ぜひどうぞ!
――え?
中では、つかさが大量のチョコレートをプロデューサーに渡していた。
デパートの特設ケージに並んでいる、ブランド銘柄のチョコを全部買ってきた勢いだ。
それも、部屋中がたくさんのチョコレートで埋め尽くされてる。
(な、なにあの、大量のチョコ)
る、留奈ちゃん! あのね、私たちね、みんなでチョコレート渡してたんだぁ。だから留奈ちゃんも一緒に、どうかな……?
……
あ…留奈。来てくれたんだ。一緒に打ち合わせたいことがあるんだけど……
え、ええ。ああ。分かったわ
思わず留奈は、手に持っていた小箱を、後ろに隠してしまった。
それで? 次の仕事はなんなの?
あんな豪華な贈り物がある手前で、こんな小さな箱を渡そうものなら、留奈のプライドが許さない。
……る、るなちゃん……
傍らでは、やはりひかりが、口惜しそうにつぶやきを漏らしていた。
引っ込みがつかなくなったのか。
一度隠れてしまった箱は、その日、もう二度と取り出されることはなかった。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああこの流れアイコネだああああああああああああああああああああああ
留奈ちゃん!応援したくなる!!頑張れー!!
アイコネらしい展開や…
空子ちゃんのもじもじかわゆい
千乃ちゃんの敬語かわゆい
自然とその光景が脳内で流れる…
なぁ!?
バレンタインにエピソード追加!ありがとうございます♪
留奈ちゃん、上手く渡せるといいなぁ