猫の兄はまた外に行ってたの?
うむ。行った、観た、勝った。
何に勝ったの?喧嘩したの?
喧嘩とは違うなぁ。神聖な決闘なのであるよ。
要するに喧嘩だろう。
喧嘩ではない!
雄の名誉と尊厳を賭けた決闘だ!
めい……そん……?
……雄の見栄のようなものだよ。
犬よ、弟ながらお前は雄の道理がわからぬか。
見栄ではなく吾輩は真に名誉……婦女子を助けるための決闘に勝ってきたのだぞ。
猫の兄は誰かを助けてきたの?
すごいねぇ。
うむ、うむ。
この点についてはにんげんのほうが道理が解っておるな。
望まぬ輿入れをさせられそうになっていた人を決闘において止めさせてきたのである。
輿入れってなあに?
んー、人という種族の雄と雌が番になる事なのだが……。
森のイノシシの雄と雌が一緒に歩いてるみたいな?
そんな感じである。
イノシシは子育てが終わればまた分かれるが人の輿入れは大体においてどちらかが死ぬまで有効なのだ。
ほう。
じゃあ猫の兄は本当に雄の名誉を守ってきたのだな。
無理やり番になるのを止めてきたのだろう。
ふふん、解ったようだな弟よ。
すごいねぇ!猫の兄はかっこいい!
ふふふ、褒めるが良い讃えるが良い。
我が偉業を。
でも無理やり番にしようとするなんて酷いね。
人ってどんな生き物なの?
そ、それは…二本足で歩き服という皮膚を取り換えられる怪物だ。
皮を変えられるなんて怖いねぇ。
ねえ犬。
……犬?
そうだな、怖いからこの話はここまでだ。
うん!
フォローしてやったぞ猫の兄よ。
助かった……まさかお前と同じ族のものだとはいえぬでな。
ありがとうな犬よ。