二日目の学校は特に何事もなく過ごし、今は放課後。

桜子ちゃん、ちゃんと約束覚えてますわよね?

わかってるよ。…あ、そうだ

 俺は、ランドセル背負って帰ろうとするを碧ちゃんに声を掛ける。

わたしたち今日また放課後遊ぶんだけど、碧ちゃんもどう?

…せっかく誘ってくれて嬉しいのだけど……。ごめんね、わたし今日用事あって…

あ、そっか。いいよ全然。また今度遊ぼうぜ!

うん……!!

 碧ちゃんは可愛らしく小さく手を振って帰っていった。

随分、碧ちゃんを前にして、口調が男の子っぽくありません?

えっ、そ、そんなことないよ!
それより、今日はどこで遊ぶの?

今日は小学生らしく、公園ですわ!

 麗花に連れられ、俺は小学校近くの公園に来ていた。

久しぶりに来たな~、この公園。昔はよくここでみんなで遊んだっけ……。

 懐かしさに浸っていると、麗花がいつの間にか滑り台の所まで移動していた。

桜子ちゃん!かくれんぼで遊びましょ~!桜子ちゃんが鬼ですわ!

はいはーい!じゃあここで数えるね

 俺は麗花に背を向け、近くにあった木に顔をうずめた。

三十秒ですわよ!

わかった、わかった~

 俺は「いーち、にーい…」とゆっくり数え始めた……。

数え終わったから探し始めるぞー

 公園を見回すと、何人か小さい子たちが遊んでいた。
 しかし、奥の方の植え込みにぱっと目を引く金色の何かが見える。――麗花の金髪だ。

やっぱ目立つなぁ。アイツは

 すぐに見つけては盛り上がりにも欠けるし、麗花が可哀相なので、「どこだー?麗花ちゃーん」と言いながら、その植え込み近くを歩く。

ふっ…クスクス……っ!

 そうしていると、麗花の笑い声が聞こえてきた。
 俺はそろそろいいかなと思い、植え込みを覗いた。

あー!見つけた、麗花ちゃん!

 麗花は植え込みから出てくる。

はー、見つかってしまいましたわ。ばれないと思いましたのに

えへへ。笑い声が聞こえたもん!

 なんだか娘と遊んでいるような気分になってきた。娘なんてできたことないけど。

そもそも、彼女すらできたことないしな……

 ――まぁそれは置いておいて。

じゃ、次は麗花ちゃんが鬼やる?

えっと…あの、ごめんなさい、わたしちょっとお手洗いに……

あぁ、いいよ。いっておいで

あの……できれば、トイレの近くまでついてきて欲しいですわ…

 と、麗花は上目遣いでそう聞いてきた。
 やはりそこは小学生。一人は不安なんだな。

いいよ。トイレの前で待ってるね

 公園に設置されているトイレまで移動し、麗花は中へ入っていく。俺は入り口の前で立って待っていることにした。

ほんと、この公園昔とあんま変わってないな…。懐かしい

 俺は改めて公園を見渡す――と、その時あるものが目に入った。
 
 すぐ横の花壇に花と紛れるようにしてある物が落ちていたのだ。

 ある物――それは、男性の本能をくすぐる一冊の本。

げっ。こんなところになんてハレンチな……!

 俺は一度目を逸らす。しかし、ついついまた視線が元の位置についてしまう。

待て、しかもこれ…手に入れるのが超困難だという伝説の…!?
なんでこんな貴重なお宝、こんな平凡な公園なんかに捨ててあるんだ!?

 俺は、自然とその本に手が伸びていく。

こ…こんな機会は滅多にない…。ちょ、ちょっとだけなら、見ても……

 幸いこの付近は人がいない。周りも遊びに夢中でこちらに意識などないし、麗花もまだトイレから出てこないだろう。

今しかっ…ないっ!!

 俺は思いきって本を手に取った!

取りましたわね!?

 はっとし後ろを振り向くと、背後には麗花が立っていた。

 ――まさか、ずっと見張っていたというのか!?

なんとなく……、違和感を感じていたんです。しかし、今ここで証明されましたわ

 麗花は突きつけるように真っ直ぐ俺を指差し、こう言う。

あなた、本当は女子小学生ではありませんわね!?

 俺は、身動きがとれなかった。

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