お客様

すみません、これ溶けてたんですけど

申し訳ございません……

 俺が謝っていると、赤ずきんがすかさず入り、

赤ずきん

良いんですか? そう言ってる間にも、お客様の大切なゴリゴリ君はダラダラ君になっていますよ

 ……と言う展開にだけはさせたく無いので、赤ずきんが来ないうちにと謝罪を繰り返し、溶けていないであろうアイスと交換をした。

お客様

この店は、ロクに冷房管理も出来ないわけ?

すみません

 すると、お客様に黙って溶けかけのアイスを突き返され、俺の手はドロドロに。まぁ、それは良いんだけど。

 お客様が背を向けて歩き出したので、俺は清掃道具を取りに行こうとレジを離れようとした。その時、赤ずきんが俺の手元のアイスに気づいた。

赤ずきん

あ、そのアイス当たってるね!

お客様

!!

え、あ? 本当だ……

赤ずきん

返された物でしょ? 折角だから棒だけ貰っちゃえ

お客様

……ちょっと、その棒当たってるの?

赤ずきん

はい。当たってますよ?

お客様

……それ、もともと私が買ったものだってことは分かってるわよねぇ

赤ずきん

ですが、お客様はもう既に新しいアイスを……

お客様

あ?

少々お待ち下さいませ!!

 一触即発になる前に、俺は急いで手を布巾で拭い、アイスを取りに行った。レジへ戻り、笑顔でお客様にアイスを手渡すと、お客様は嬉しそうに微笑む。

お客様

どうも

 お客様は、アイスを両手に嬉しそうに外へ出た。その様子を見て、赤ずきんは珍しく不機嫌そうな顔をして俺を見る。

赤ずきん

良かったの?

うん、もともとはお客様の商品だし、店の人間が自分の物にするのはいけないことだろ? それにさ……

何となく、今日はあの人と同じアイスを食べたくなかったんだ

赤ずきん

……ふふ、そっか

バイト君

ゴリゴリ君、何味が好きっスか?

店長

俺、んめェ~棒派

~赤ずきん退勤時刻~

赤ずきん

狼さんお疲れ様、お先失礼致します

お疲れ様、今日は随分と買って……

……コレ

赤ずきん

いやぁ、お客様が返品してるの見たら、食べたくなっちゃって

……

 やっぱり彼女は血も涙も無いなぁ、と思った。

25・当たり! スーパーアイス棒

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