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こんな奥にまで敵兵が……

……本当に堕ちたのか……我が国は……

























【序章:滅びゆく城 Ⅰ】





























城門を、
通路を駆け抜ける。
いつもと違う鉄臭さが充満する中を。

こんな臭いはしなかった。
少なくとも、今朝までは。




















壁際で剣が刺さったままの兵士が
こと切れている。



戸口に倒れているメイドの脇に

赤い林檎が転がっている。








あ、サリエスさん!
見て下さい。いい林檎が入ったんですよ!

アップルパイ焼きますから、早く帰って来て下さいよ

でなきゃレナ様とふたりで食べちゃうんだから

今朝、そう言って笑った彼女は
林檎より赤く染まっている。


背中にばっさりと走る傷は
まだ真新しい。





































来る途中で切った男の声が
脳裏に響く。

無駄だ。もうこの国は堕ちた。
王族も皆殺しにした。
この先に進んでも、もはや救う命などあるものか

うるさいっ!

否定するように、
言葉を遮るように、
剣を払った。







だが
あの男が言ったように
どれだけ探しても
生きている者はいない。

現れるのは敵兵ばかりだ。

































王……
王妃……


玉座から滑り落ちるような形で
倒れている王が、

幼い王子を胸に抱いたまま
めった刺しにされた王妃がいた。









あの男が嘲笑いながら唱えた
呪いの言葉は

あの男を切り捨てても消えない。






























手遅れ、なのか?
なにもかも――






いや……まだ、


























「あなたが、サリエス?」




























まだ……



















「あたしは、レナよ」
















序章:滅びゆく城 Ⅰ

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