あー学校終わったー!こんな早くに上がれるなんてやっぱ小学生は最高だぜ!

 と、どこぞので聞いたことあるようなセリフを言って俺は碧の席へ移動する。

あーおいちゃんっ。じゃあ一緒に行こ

うん。でもどこに行くの……?

それはあとのお楽しみ!ほら、早く行くよ!

ええ!行きましょう!!

……。

あら?わたくしも一緒で構いませんよね?

じょ……城ヶ崎さん…!?

嫌ですの?

ううん。ただびっくりして……

じゃ、三人で行くか

 ――人数が多い方がもっと楽しめるしな。

こ…ここは…

ゲームセンター!
一度は来たことあるだろ?

ううん。知ってはいたけど、初めて来た……

マジで!?

というか…小学生だけでこういったところに来るのはあまりよろしくないと
思いますけれど…

大丈夫だって。俺がいるから

……あなた自分をなんだとおもってますの?

あー…まぁ細かいこと気にしない!ちょっと遊ぶくらい大丈夫よ!

 俺は強引に二人の手を引き、奥へ入っていく。

わぁっ……!バスケットゴールがある…!これはホッケー?それに……なんでこんなところに銃が……

(とある筐体の画面にゾンビが大きく映し出される)

ひゃあああああ!ゾっゾンビ!!!!

 碧はその場で叫んで俺に抱きついてきた。

 ――俺に抱きついてきた!!

もー。たかがゲームですわよ。何をそんなに驚いているのですか

ごめんなさい。急に出てくるものだから…!

 そう言って碧はゆっくり俺から離れた。
 もう少し抱きついててくれても全然良かったのに。

…で、どうしてここに来たんですの?

 麗花の問いで、俺は本題を思い出す。

碧ちゃん、あんまり運動ができないって言ってたじゃない?
でもゲームなら、実際と違うけど色々できるかなって

例えば、これはサッカーゲーム。ここのボタンを操作してプレイするの

…で、これがダンスゲーム。女の子のキャラを選らんでリズムに合わせてこのボタンを押すんだ

 俺は色々案内しながら、各ゲームを説明していく。
 碧は目をキラキラさせてゲームセンター内を興味深そうに見ていた。

 一通り中を回り終えて、碧を見て言う。

な、これなら碧も楽しめるだろ!

――!

じゃあ、早速遊びましょう!わたくし、あのカートで遊びたいですわ!

 麗花はレースゲームを指差した。

いいな!それで遊ぼ!

 緊張する碧を連れ、座席に座らす。

 実際の車のような形になっていて、ハンドルを回したりしたり、アクセルやブレーキを踏んだりして、リアルに近い操作でプレイできるのだ。

そんじゃ最後はここにお金を入れて――あ。

 と、俺はここで大事なことに気付く。

お金が……ない。

 そうだ、小学生になって財布なんて持ち歩いてないいんだった。
 
 待て。そもそも俺んとこって小遣い制?

はぁ。そんなことだろうと思いましたわ

 麗花は呆れたようにため息をつくと、ランドセルから可愛らしいウサギの財布を取り出した。

今回はわたくしが奢りますわ。
――思いっきり遊びますわよ!

城ヶ崎さん……!ありがとう…!

……ありがとう、麗花

 小学生に奢られる俺、すっごい情けない。

 今度何か麗花に買って返そう…。

 ――そんなこんなで、俺たちはゲームセンターで心ゆくまで楽しんだ。
 碧は、その間ずっと笑顔で、一番はしゃいでいたと思う。

大内さん。城ヶ崎さん。今日はすっごく楽しかった

 碧はペコリと小さくお辞儀をした。

わたし……昔から身体が弱くて、そのせいであんまり遊べなかったりして、友達もいなかったから、クラスの子とこうして放課後遊べて新鮮だった

今日のことは忘れない。ずっと大切にする。……ありがとう

 俺と麗花は顔を見合わせて微笑んだ。
 そしてもう一度、碧の方を向く。

……ね、その大内さんとか、城ヶ崎さんって呼び方やめない?

…え?

わたくしたちのことは、下の名前で呼んでくれて構いませんのよ?

だってわたしたち

 俺と麗花は同時に言う。

『友達』でしょ?

『友達』でしょう?

……!

うん。桜子ちゃん、麗花ちゃん……!

 そうして、俺たちはひとしきり笑い合った。

 麗花と二人で、碧を家の近くまで送り、帰る頃にはもう日が沈んでいた。

いや―今日は助かったよ。ありがとう、麗花ちゃん

全くですわ…なんてね。構いませんことよ。わたくしも楽しかったのですから

 麗花はツインテールを夜風になびかせ、上品に笑う。
 というか…ほんとにお嬢様らしい。小学生とは思えない雰囲気を持っている。

……ねぇ、桜子ちゃん

…何?

良ければ明日も放課後遊びませんか…?

うん。いいよ。
あ、碧ちゃんも誘う?

……ええ。いいですわよ。
あ、わたくしはここで。家はあちらですから

もう暗いし送るよ。危ないし

大丈夫です。すぐそこですから。あなたの方こそ気をつけて帰りなさい?

 麗花は二、三歩歩き振り向いた。

――小学生……なんですから

 そう言うと、麗花は家へ向かって歩いていった。

6・寄り道あふたーすくーる

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