人は一人では生きれない…

故に様々な孤独がある
故に生と死が天秤にかけられる。

そして[それ]は俺の前に現れる。

…何も変わらないはずの夜に
全ては始まった。

マスター

今日も相も変わらず暇な事で。

ダイゴ

もう店閉めちゃいましょうか、マスター。

午前二時。

オレンジ色の薄明かりの下、
八人程座れる小さなカウンターは小綺麗に片付いている。

がさつな俺には出来ない。

潔癖症であるバーテンダー、ダイゴのおかげだ。
こんなバーで働くより他に仕事あるんじゃねぇか
俺がそう聞くと彼は、腐れ縁ですよ、と笑う。

ダイゴ

いつまで僕らこうしてのほほんと過ごせるんですかね、ちょっと不安です。

マスター

さぁ…何とかなるんじゃないの?いいバーテンもいる事だしね、問題ないって。

ダイゴ

はい?…何も出ませんよ?そんな事言っても。

マスター

まあそんな怖い顔しなさんな。
あと、一本だけ…ね?

軽いため息をついて、ダイゴは冷蔵庫から小さな瓶ビールを二本カウンターに置いた。

マスター

あれ?一本多くないか?

ダイゴ

僕の分です。

マスター

じゃあ改めて乾杯!

ダイゴ

はいはい。明日頭痛いとか言わないで下さいよ?

二人で笑いながらビールを胃に流し込む。

昔からこうしてつるんでいるが、ダイゴと飲む酒はうまい。気の合う奴と毎日だらだらと店をやっている自分は案外幸せなのかもしれない。

そう感じながら酒の余韻に浸っていた。

虚ろな目をした俺にダイゴが視線を向ける。

ダイゴ

あれ、珍しい。大丈夫です?

マスター

ん?何とか。えらく今日は酒がまわる…疲れてんのかね…

ダイゴ

何も疲れる事してないじゃないですか。

マスター

…確かに。

午前二時三十分。

まどろみに身を任せて俺は煙草に火を点けた。

いつもと変わらないはずの、夜に…。

To be continued…

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