「………やった、魔王を倒したぞ」
「………やった、魔王を倒したぞ」
“愚かだな”
“我は、何度でも生き返る”
“勇者が存在する限り”
“人間が存在する限り”
“何度でも、何度でも……”
「戯言を言うな、これが最後だ!」
最後で………あるものか。
我もお前たちも生まれ変わ……る
………っ
この世界は……平等だ
平等に生まれ変わるのだ
我も、お主たちも
勇者は 魔王のもとに辿り着いた。
仲間の屍を乗り越えて。
勇者は 魔王を滅ぼした。
仲間の命を犠牲にして。
勇者は 絶望した。
勇者は、願った。
生まれ変わって
また 皆と再会するために………
実に後味の悪いお芝居だった
これは、伝統ある物語ですよ
勇者だったら、お姫様を助けて魔王を滅ぼせば良いのよ
どこの絵本ですか?
リアンはもう少し難しい本を読むべきです。
絵本じゃないわ。恋愛小説よ。
カリスは硬すぎるの。そんな分厚い本ばかり読んで、人でも殴るつもり?
殴られたいですか?
お断り
それで本気なのですか?
何を?
冒険者ギルドの仕事ですよ。
調査や魔物の討伐なんて危険なことを貴女がする必要はありません。
掃除や店番の依頼だと報酬が安いのよ
それで、良いじゃありませんか?
うちの孤児院は寄付金だけではやっていけないのよ。
やっぱり、オレも行きます
何言ってるのよ。
カリスは孤児院の跡取りなんだし。
それこそ危険な任務はダメ。
ですが
ちゃんと強い冒険者と行くから心配しないでよ。
あのギルド、勇者の生まれ変わりがたくさんいるのよ。
そういうのが居るから困るのですよ。
自称勇者の生まれ変わりだけで、何人いるのですか?あのギルド
100人ぐらいかな
その中に本当に勇者の生まれ変わりが居ると良いのですけどね
名乗っているだけあって実力はあるわよ。
50人ぐらいは強いわ。
半分は口ばっか星人だけど。
何で、そんなに楽観的なのですか
私は私を育ててくれた神父様たちが幸せならそれで良いの。
その為なら何でもするわ
何? この音
さぁ?
ようこそ、旅人さん。
東の都ロイズタウンへ。
勇者伝説の舞台です。
ここが勇者の都……
あなたは勇者に興味があるのですか?
どこに行けば勇者になれるのかな?
冒険者ギルドにお越しください
冒険者ギルドって何処にあるんだ?
地図をお渡しいたしますね
くそ、道に迷ったぞ
俺、何かしたかな
この街は物騒だな。
路地裏に入ってからずっとあいつら、追ってくる
くっそ、しつこい奴らだ
……っ
うわぁ
………っ?
……っ
いったぁぁ
リアン、大丈夫ですか?
ご、ごめん、よそ見していて……
怪我してない?
大丈夫よ。
そんなに急いでどうかしたの?
お、追われているんだ。裏通りに入ってから、強面の連中に。
とりあえず、こっちに来て
くそ、見失ったか
行ったみたいね
ありがとう、助かったよ
あれは一体……
あなた、二番街通りに入ったのですね
二番街通り?
えーと、男の人が好きな男の人たちが住む場所
!?
近付かなきゃ、
もう大丈夫だと思う
ところでさ………冒険者ギルドってどこにあんだ?
だったら私が案内するわ
え、君が?
一応、ギルド所属よ。
下っ端中の下っ端だけどね。
君みたいな女の子にも勇者のお告げがあったのか?
え?
何よ、それ
冒険者ギルドにいるのは、勇者のお告げを聞いた者たちなんだろ?
そんなわけないよ。
自称勇者の生まれ変わりは全体の半分にも満たないわ。
え? それじゃあ、冒険者ギルドって何なんだ?
何でも屋みたいなものよ。魔物討伐や、遺跡調査、家事手伝い、薬草採取に大掃除。
そうなの?
勇者候補の集まりじゃなかったのか…
貴方は勇者のお告げを聞いたの?
ああ、夢枕に父親が現れたんだ。そして
東へ行け、
東に行き、名声を上げよ
それが、お前に与えられた使命で、
運命だ
お前は勇者になるのだ
………ってね
胡散臭い
信じてないな
そういう話はギルドでしてね
ああ……
じゃ、カリス……行ってくるわ
…………はい、お気をつけて
to be continued