数分後、結月と美咲達女子高組は待ち合わせ場所に到着した。

結月

アキは……まだか

 辺りを見回して結月はそう判断する。
 ラインの連絡を待ってから行動する明彦の方が遅くなるのは想定内だった為、特に驚きはしない。

 しかしそれでもがっかりしてしまう自分が居る事には驚いた。

結月

今までこんな風に思った事なんて無かったな……

 思わず溜息を漏らし、ふと思い出す。

結月

そういえばわたしが待つって事……今まで無かった気がする

 結月と明彦はずっと一緒に育ってきて、常に近くに居るのが当たり前だった。
 学校が離れた事も無いし、家も隣なのだから環境的にも近い距離にずっと居たのだ。
 そもそも離れる事自体が少なかったのである。
 だからしっかり外での待ち合わせ場所を決めて集まるという事自体も少なかった。

 ただそれだけでは無い事も何となく結月は気付いていた。

結月

もしかしてアキは……ずっとわたしを待たせないようにしてきたのかな

 結月は待つという事を余りしていない。その代わり後から行くという事は多かった気がする。
 明彦が常に先に待っていてそれを疑問にも思わなかったが、こうして待つという立場になったせいかその可能性に思い当たった。

結月

わたしは思ったよりもアキの事、わかってなかったかも知れない

 思わずそう思った。
 しかし美咲が心配そうに言った言葉で現実に引き戻される。

美咲

ユズちゃん……大丈夫?
……やっぱり不安なの?

 学校で聞いていた相談事について思い浮かべたのか、結月の事を心配してくれたようだった。

結月

えっい、嫌。全然そんなじゃないよ!
……ちょっと考え事をしてたんだ

 弾かれたように顔を上げ、隣に居た美咲をしっかりと見ながら慌てて言う。

美咲

考え事?

 不思議そうに尋ねてくる彼女に頷く。

結月

うん。
小さい頃からずっとわたし……アキを待った事なんて無かったなって思ってたんだ

美咲

そうなの?

 問い返す美咲に再び頷き、考えていた内容を話す。

結月

うん。いっつもアキが先に待ってたから……わたしは待たなくて良かったの

美咲

へぇ……それは凄いねぇ。
明彦君の気遣いだろうね

 美咲は驚いたように、しかし感心したように言う。

結月

やっぱりそう思う?

美咲

うん。待つって物凄い大変な事だと思うんだ、私は。
ただ待ってる事だけなら別に難しくも何とも無いんだけど……どうしても何も考えないで待ってるって出来ないから

結月

確かにそうかもね……。
わたしの場合はアキが待ってるのが当たり前みたいだったから、後から行く時も何も考えなくて良かったし

美咲

うん。特に私は家族が忙しい人達だから待つって事が多くて。
相手が遅いと何かあったのかなって心配になるし、約束忘れちゃったのかなって不安になったりもするよ

結月

確かにそうかも……

 美咲の言葉は共感出来た。

 そんな話をしていると駆けて来る足音が聞こえ、顔を上げる。
 見てみると明彦が走って向かってくる姿が視界に入った。彼と一緒に走っている少年の姿も目に入る。

結月

あれ?あの人……何か見覚えあるような気がするけど……

 結月は驚いて記憶を手繰る。しかし一致する人物は浮かばなかった。

結月

……気のせいかな

 結局そう思って考えるのを辞めた頃、丁度息を切らせた明彦が目の前で足を止めたのだった。

1-11 待つオタク彼女(修正完了)

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