私は驚いて小岩くんの顔を見ました。やっぱり目は笑っていないのに、口元だけは微笑みを浮かべています。
え、わかったんですか?
私は驚いて小岩くんの顔を見ました。やっぱり目は笑っていないのに、口元だけは微笑みを浮かべています。
簡単な話さ。映像に犯人が映っていた
え、も、もしかして小岩くんって幽霊さんとか見えちゃうんですか?
そんなものはいないさ
金色のコインを手の上で踊らせながら、小岩くんは当然のように答えます。
え、だったら誰が?
夕方から朝にかけてあの下駄箱を開けた人物は一人しかいない
えっと、映像で開けていた人を思い出してみます。
岩見さんしかいませんよ?
そうだ。その手紙を入れたのは岩見。君だ
小岩くんの視線を受けて、岩見さんの顔がみるみる青ざめていきます。それは自分が犯人です、と言っているようなものでした。
わ、私は。私は!
岩見さんは続きが出てこないまま口を開け閉めしてから勢いよく立ち上がると、そのまま走って事務室を出ていってしまいました。
えっと、解決したのかな?
はい。お邪魔、しました
私は渡会さんにお礼を言って事務室を出ます。小岩くんは不満そうな顔をして私の後ろに続きました。
でもどうしてわかったんですか?
言ったとおりさ。下駄箱を開けた人間が一人しかいないならそれが犯人だ。夕方に上履きを入れるときに忍ばせていた手紙を隠して下駄箱に入れたんだ。上履きの下に隠していれば、見下ろす角度のカメラじゃ画質も悪くてわからなくてもしかたない
君は本人があんな手紙を自分で入れる理由がわからないから、そうやって無意識的に岩見を犯人から外した
だってそんなことする理由がないじゃないですか
岩見さんはそんないたずら好きってわけでもないですし、からかったりするためとは考えにくいのに。
彼女は真面目だから、そんなことするはずない。そう思ってるんだろう。それが目の前で起こっている事実を歪めているんだ
私の考えをピタリと当てられて、感動してしまうようなちょっと悔しいような複雑な気持ちです。
一緒に帰りたかった、と考えるべきだろうね
はい?
彼女は自分で僕に、解決できないなら一緒に帰ってほしい、と言った。これが目的だろう
ということは
彼女は僕に好意があった。君から噂を聞いて事件性のある話をすれば僕が興味を持つと思ったんだろう
だったら!
答えてあげればいいのに、と言おうとして私は言葉を止めました。そんなこと小岩くんに期待する方が間違っているのです。そんなことくらい推理力のない私にだってわかります。
そんな面倒なこと、する必要なんてない
そう言って小岩くんは下駄箱のある昇降口の方へと行ってしまいます。私は慌ててその背中を追いかけました。