その便箋は差出人も宛名もなく、真っ白なもので、封は可愛らしいハート形のシールで留められていました。これは間違いなく。

ラブレター、ですか?

石見

あ、そうなのかな?

中身は見たんですか?

石見

う、うん。でもね

 そう言って岩見さんが中身を見せてくれました。

『スキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキですスキです』

これは、ラブが歪んでます

石見

やっぱりそうなのかな? 危ないかな?

危険が危ないです!

 ノートを一ページ破いた両面にびっしりと並んだ文字。隙間もないくらいに埋め尽くされた愛情表現はロマンチックさの欠片もありません。

それで?

 こんな怖いものが机の上にあるのに、小岩くんは少しも動じる様子も見せないまま、話の続きを促します。

石見

それで、この手紙の差出人を探してほしいの

無理だね。情報が少なすぎる

石見

そんな。私、これが今朝、下駄箱に入っていて、ずっと落ち着かなくて

そうですよね。小岩くん、びしっと解決してください。この前みたいに

 私と岩見さんで小岩くんにお願いしてみます。すると小岩くんは何かを決心したようにカバンに教科書を詰めて立ち上がりました。

調査に行くんですね。私もお手伝いできることなら

いや、帰るよ。ここじゃ静かに読書もできない

岩見さんが困ってるんですよ。助けてあげましょうよ

僕が言ったように、情報が少なすぎる。断定はできないよ

 小岩くんはそれだけ言うと、教室から出ていこうとしてしまいます。

石見

だ、だったら一緒に帰ってもらえませんか? と、途中まででもいいので

どうして?

石見

お、男の人が一緒だと安心できるし。前に同じ方向に帰っているのを見たことがあるので

そうですよ。一緒ならこの手紙を出した人が何か証拠を残すかもしれないですし

 それにこうしてクラスの子の事件を解決してくれれば、きっと小岩くんもクラスに馴染んでいけると私は思ったのです。

そんな不確定なことに時間を割きたくない。誰か他の人に頼んで、情報が増えたら少しくらいは考えてあげてもいい

 なかなか小岩くんは強情です。

わかりました。情報が増えれば推理してくれるんですよね?

行きましょう。小岩くんも岩見さんもついてきてください

 そういえば私には一つ重要な情報を握っているかもしれない人に心当たりがあったのでした。

二話:透明人間ストーカー(事件編)Ⅱ

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