結月の相談を最後まで聞いた美咲はそんなように言った。
そんな事があったんだ
結月の相談を最後まで聞いた美咲はそんなように言った。
うん。やっぱりわたしが悪いんだよね
沈んだ様子の結月にしかし美咲は同意しなかった。
うーんそうかなぁ……私は結月ちゃんだけが悪い訳じゃないと思うよ
え
私は元幼馴染って関係性が影響してると思うんだよ
元幼馴染って関係性?
幼馴染ってとっても素敵な関係性だよね。
ずっと一緒に居るからお互いの事を良くわかってるし、それこそ全部知ってるんだって思いがちになるよね
実際わたしもアキもそうだと思ってるよ?
それが問題じゃないかな。
だから結月ちゃんも明彦君も言葉が足りてないって事に気付いてないんだよ
言葉が足りてない?
幼馴染の関係性ってのは一つ一つ気持ちを言葉にしてお互いの想いを確かめ合わなくても上手くやっていけるし、同じ方向を見ているんだって思う事も出来るよね。逆に言葉にしない方が上手にやっていけるかも知れないよ。そうそう無くならないから。
だけど恋人は違う。恋人って関係自体も互いの好きの気持ちを確かめ合った結果出来上がるものだし、二人が違う方向を見たその瞬間に終わってしまう関係でしょ。だから乙女ゲームにはハッピーエンドもあるけどバットエンドもあるでしょ?
美咲の言葉に結月が頷けば彼女は続けた。
そしてバットエンドにしない為に選択肢を……言葉を選んで伝えるんだよね?
こう言えば乙女ゲームが好きな結月ちゃんにはわかるよね?
そっか……本当の気持ちは思うだけじゃ駄目なんだ……ちゃんと伝えなきゃ
うん、良く出来ました。
えらいえらい
ありがとう美咲ちゃん。お陰でどうすれば良いのかわかったよ。
美咲ちゃんの言葉……凄い説得力あった。
一杯恋愛経験して来た人みたい
私の乙女ゲームの恋愛経験が役に立って良かったよ。
あ、後ね……結月ちゃん
ん?なぁに?
急に名前を呼んだ美咲に結月が問い掛けると美咲は照れた表情で言った。
あ、あのさ……ミサって呼んでくれないかな……その……明彦君の渾名呼び聞いてて良いなって……。あ、む、無理にとは言わないけど!
私は彼氏とかじゃないし、へ、変だよね
そんな美咲に結月は笑顔で応じた。
変じゃないよ。相談も真剣に聞いてくれたミサちゃんは大事な友達だからね。
あ、わたしの事もユズで良いよ
ありがとう嬉しいよ……ユズちゃん
心から嬉しそうに言う美咲に結月も嬉しくなった。
うん、あ……ミサちゃん
ん?
再び名前を呼ぶ結月に美咲が返すと結月は決意を込めた表情で言った。
わたし今日の帰りアキとの事頑張るから……見届けて欲しいんだ
結月の言葉に美咲も即座に頷く。
うん、勿論だよ!
任せて!
こうして密かに帰りの人数は又増えているのであった。
悩みが解決した所で結月は重要な事を思い出す。
長らく話しちゃってたけど今何時!?
その結月の言葉に慌てて美咲がスマホを取り出す。
8時50分。入学式は9時開始でここから体育館までは歩きだと15分……ということは
走らなきゃ遅刻だぁ!!
そう思うや否や二人は大慌てで星華女子高等学校体育館へと向かうのであった。