これから話すのは、本当に有ったのか無かったのかわからない話。
取り留めも無い、存在するかどうかもわからない誰かの記録。
これから話すのは、本当に有ったのか無かったのかわからない話。
取り留めも無い、存在するかどうかもわからない誰かの記録。
僕の昔話を聞いて下さい
昔話かい?どの位昔の話かな?
随分と最近のことのような気はしますけれど、もう昔の話です
そうか。どんな話かな?
僕は自殺未遂をしました
自殺未遂ね。まぁ、実際自殺というのは成功率が低い物だしね
溜めていた薬を、全部飲んだんです
どんな薬かは訊かない方が良さそうだけど、どれくらい飲んだの?
胃洗浄をして出て来たのは300錠くらいだそうです。
それを、お酒で飲みました
お酒でか。ただではすまなかっただろう?
はい。薬とお酒を飲んで、次に目が覚めたのは二日後で、病院のベッドの上でした
五体満足だったかい?
もう少し状態が悪かったら、右脚を切り落とすところだったそうです。
僕は運良く落とさずに済みましたが、自殺未遂をして足を落とす人は多いと、医者から聞きました
自殺未遂をしたきっかけはあるんだろうけれど、それは誰かに話した?
話してません
これから話す予定は?
無いです
ずっと抱えていくつもり?
わからないです。
そのきっかけはもう僕の中で風化して、自分でもわからなくなってきてるんです
そう。君がそれで良いなら良いけれど
生きるのは難しいことだと、偶に思います
そうだね。
だとしても、君はまた自殺をする気があるのかい?
それは無いです
命の尊さに気づいた?
違います。
自分で死ぬと言うのはあまりにも難しくて、失敗して体が欠けるのが怖いんです
なるほど
あと
あと、何かな?
だいぶ前にひどくお腹が痛くなって、起きることは愚か動くことも出来なくなって、そんな事が数時間続いたことがあるんです
うん。そのまま死ねれば良いと思った?
その時に初めて、『死にたくない』って思いました
そうか
昔話は以上です
少しは気が晴れた?
はい。少しは
またいつでも聞かせておくれ