いちはやく事務所に戻ってきたのは、留奈、ひかり、楓。

GARNETPARTYの三人である。

留奈は大事そうに、胸にサイン色紙を抱えている。

気を利かせてくれた楓により、リボンが施されていたので、それなりにプレゼントらしく見える。

ひかり

さ、留奈ちゃんいこ?

留奈

そ、そうね。今こそ留奈たちの真価を見せるとき……

先ほどカフェを飛び出した時は勢いよかったのだが、今の留奈の声はうわずっている。

ごくりと喉まで鳴らしていた。

留奈さん、どうしましたか

留奈

なんでもないわよ!? ほら、行くわよ!

留奈は覚悟を決めたように、思い切り事務所のドアを開けた。

プロデューサー

あれ、みんな今日は遅かったね


プロデューサーは、いつも通り中で待っていた。

留奈

……っ


何故か留奈は、とっさにサイン色紙を背中に隠してしまう。

ひかり

プロさん! おはようございまーす! って、あれ、留奈ちゃん、どうしちゃったの?

れいのものをプロデューサーにわたすてはずでは

留奈

わ、わ、分かってるわよ……! はうぅ……!


ひかりが留奈に歩み寄って、耳にそっと口を寄せる。

ひかり

もしかして留奈ちゃん、恥ずかしくなっちゃった、とか?

小声で聞くと、留奈の頬がぼっと赤く染まった。

留奈

や、やりすぎたかもしれない。キスマークなんて……!

ひかり

あ、あははー。まあね、うん。でも留奈ちゃんからのとっておきなんだから、喜んでもらえるよきっと

ひかり

大丈夫。留奈ちゃんのタイミングでいいから、ここは私に任せておいて!

ひかりは頼もしく胸にどんと手を置いて、プロデューサーに走り寄っていく。

ひかり

プロさんプロさん! 日ごろの感謝を込めて、肩をもみまーす

プロデューサー

え!? ひかり!?


戸惑うプロデューサーに構わず、ひかりがプロデューサーの肩を揉みだす。

お茶をいれました、プロデューサー

プロデューサー

あ、ありがとう楓

もっとからだをいたわってください

しばらく、うごいてはいけません。わたしがおせわしますから

ひかり

かえちゃんナーイス☆ 大好き!

ひかり

えへへ、GARNETPARTYのおもてなし、どうかな?

プロデューサー

至れり尽くせりだね、どうしちゃったんだ?

ひかりがプロデューサーの肩を揉みながら、留奈にウインクで合図を送る。

留奈もそれで腹を決めたのか、一度ごくりと唾を飲み込み、前へと進んでいった。

留奈

ぷ、プロデューサー! これ、留奈たちからの気持ち! 受け取って!

プロデューサー

これって、サイン色紙……?

留奈

深い意味はないのよ!?

ひかり

留奈ちゃんってば、ちゃんと説明しなきゃ。プロさん、えっとね――

ミユ

ばーん! ナチュライク登場~!!


その時、ミユ、つかさ、八葉が事務所に飛び込んできた。

つかさ

プロデューサー! わたくしたちからの愛です! 受け取ってください!

三人ともが大量に持ってきたのは。

予想通り――大量の石だった。

ドサドサドサっと、プロデューサーへと渡していく。

プロデューサー

あ、愛が重い

ミユ

んふふ~、やっちゃんがいーっぱい走って頑張ってくれたから

八葉

は、はいっ! たくさんたくさん、きれいな石を集めました!

八葉

プロデューサーさんに喜んでもらいたくて、が、がんばりました……! はうぅ……!

プロデューサー

よ、よく分からないけどありがとう

ミユ

だいせいこ~う!

大量の石を贈って、ナチュライクの三人はハイタッチをしている。

――そこに、メモリアの三人も入ってきた。

空子

えへへ、プロデューサー!


空子、唯、千乃が持ってきたのは、ホールケーキだった。

空子

私たちからはケーキです!

留奈

なっ、何よ、春宮はミニカーじゃなかったの?

空子

えへへ、唯ちゃんが、宝物は私に大切に持っていてほしいって

それは空子の大事なものだから

空子

だから三人で話し合って、みんなで食べられるようにケーキを用意しました!

千乃

千乃はね、このウサギのメレンゲドールもらう約束してるからね?


唯がプロデューサーの前に立って、ぺこりと頭を下げた。

いつもいつも、私たちの為に頑張ってくれて本当にありがとうございます、プロデューサー

50歳のお誕生日おめでとうございます

プロデューサー

ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれみんな

プロデューサーは、ぽかんとしてしまっていた。

プロデューサー

……僕、今日誕生日じゃないよ?

留奈

へ?

留奈もぽかんとしている。

事務所のアイドル、みんなぽかーんとしていた。

プロデューサー

50歳って……もしかして、まひろさんとの会話を誰か聞いた?

ミユ

自分が聞いたんやけど……

プロデューサー

あの……非常に言いにくいけど、実家で飼ってるオウムが今日50歳の誕生日、なんだ

オウムって……


唯がよろける。

プロデューサー

まひろさん、わざわざ僕にオウムの餌をくれて。もしかしてそのことかなって

プロデューサー

みんな、僕の誕生日だって勘違いしてた……んだよね?

留奈

あああああ


留奈ががくりとうなだれる。

プロデューサー

ご、ごめん! 本当にごめん!

空子

えへへ、プロデューサーが謝ることじゃないですよ

空子

みんな、プロデューサーにいつでも何か贈りたくて仕方ないんです。それくらい、いつも感謝してるんです

空子

だから、誕生日じゃなくても、プレゼントができてよかったです


空子がにっこりと笑って言ったことで、場が和んだ。

留奈もそれで持ち直して、口を開く。

留奈

け、決着はついてないわ

留奈

どのユニットが、事務所で一番なのか

留奈

プロデューサー、3ユニットからのプレゼント、どれが一番心に響いたの?

プロデューサー

どれが一番……?


プロデューサーがびっくりしたように、アイドルたち全員を見渡す。

みんな、プロデューサーの審判を待っていた。

プロデューサー

えっと、困ったな……

プロデューサー

どれも僕の心には響いたよ、大切に考えてくれた、頑張ってくれたってことは十分に伝わってきた

プロデューサー

僕の事務所のアイドルたちは、最高だ

プロデューサー

改めて教えてくれてありがとう。これからも、よろしくお願いします

プロデューサー

……それじゃ、だめかな?

ミユ

……留奈さん?


ミユが一応、言い出しっぺの留奈に確認を取る。

留奈

……良いじゃない

プロデューサーの言葉に、誰よりも満足そうに、留奈はうなずいた。

空子

えへへ、せっかくだからみんなで、ケーキ食べましょう!

ミユ

なんかよう分からんけど、えっと、オウムのお祝いや!

ひかり

みんなでパーティだね! あ、ちゃんと全員からのプレゼントもあるんだよ、マッサージ機!

プロデューサー

え、い、いいのかい。結局僕は誕生日じゃないのに…

ひかり

でももう用意しちゃったもーん

空子

いつもお疲れさまです、プロデューサー!


そうして、いつもの事務所で、お祝いがはじまった。





第2話 ユニット対抗戦!

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