残されたKのフォーカードと役なしではもう勝負はついてしまっています。
二つ選んで二つ残せば、どちらを除外しても違和感はない。勝負をする選択はこの後だと思っているから、選んだ方もそんなことは気にならない
そして自分の選択が介入したから、伏せられたカードには既に不正に役が作られているという可能性を無意識に排除してしまった
残されたKのフォーカードと役なしではもう勝負はついてしまっています。
しかも次の二択を武田が勝手に選んでしまっても、さっきは自分が選んだのだから、と先を譲ってしまう。本当に大切な選択はここだというのに、無意味な選択に判断を鈍らされている
本当だ……!
Kのフォーカードを見つめながら山下くんは呆然として呟きました。
どこで聞いたのかは知らないが、初級レベルのトリックさ。わかっていれば声を聞いているだけでも見当がつく
このトリックの弱点は勝ちの役を仕込んだ組は一番最初に伏せた組にしかできない、ということ。そしてその日は同じ役しか仕込むことができない、ということだ
武田くんは私と勝負するとき、すぐにトランプをすべて集めてしまいました。私がカードに触れる前に、です。そうしないと、今自分の手元にある四枚のKを山の一番下に集められないからだったのです。
だから、連戦をしてすべてフォーカードじゃ明らかに怪しいし、トリックがわかっていればどの組を選べば勝てるのか、こちら側にもわかってしまう
小岩くんは広がっていたカードを集めて、また一つの山に戻すと、山を二つに割って華麗な手つきでカードを切っていきます。そして完全に混ざった一つのトランプの山ができました。
たったこれだけのことさ。奇跡でも幸運でもなんでもない
小岩くんは立ち上がると私が手のひらに乗せたままだったコインを取って、ピンと宙に跳ね上げました。
この世界には奇跡も魔法も偶然もない。あるのは誰かが仕掛けたトリックだけだ
それを仕掛けたのが、人か神かという違いだけさ
小岩くんはそう言ってまた笑いました。やっぱり冷たい瞳をしたままで。
ちょっと待って!
自分の席に戻ろうとした小岩くんを山下くんが呼び止めました。
奇跡も偶然もないっていうなら、コイントスは!? 僕たちを助けてくれたコイントスもトリックがあったっていうの?
もちろんだ
そういえば。私がトスしたあの金色のコイン。すっかり忘れていたけど、表が出たから小岩くんが賭けに入れてくれたんでした。