数日後。



 エドワード主催の城でのパーティーも無事に終わり、今日は焔たちがヤマトに発つ日。

汐音(しおね)

この度はお世話になりました


 丁寧に汐音が頭を下げる。

エドワード

汐音…………私はいつでもお前を歓迎する


 エドワードは汐音の髪に口づけをしながら微笑んだ。

焔(ほむら)

さりげなくナンパするな

汐音(しおね)

仲が良いのですね

従者

賢者様の姿を見失ったときは焦りました

焔(ほむら)

汐音以外の従者が来ているとは思わなかったぞ

従者

エドワード殿下とご一緒にイルミネーションを見ていたとは。賢者様とエドワード殿下は仲がよろしいのですね

焔(ほむら)

二人きりで見たのではない。汐音も一緒だ

汐音(しおね)

私は空気でしたよ。お二人ともお酒を飲んで、仲良くお二人で酔いつぶれていましたよね

エドワード

それについては、汐音に迷惑をかけたな

 汐音にキスをした後、どうしようもなく酔いたくなって酒を飲んでしまった。

 エドワードも賛同してしまった以上、汐音に止める権限はない。

汐音(しおね)

エドワード様の従者も近くに居たので良かったです。焔様がエドワード様を酔い潰すなんてことになれば国家問題ですから

エドワード

城を抜け出したのは私だ。こっちが悪かった気がする。どちらにしても国家問題に発展しかねない

従者

賢者様、そろそろ船がでます


 従者が声をかける、いよいよエドワードの別れだ。

焔(ほむら)

……来年も来る


 振り返り、エドワードに微笑みかけたのは焔だった。

エドワード

おう

エドワード

待っているさ。来年のノエルの奇跡では……お前が私のものになることを願おう


 エドワードは視線だけ汐音に向けて、小声で告げる。

汐音(しおね)

私は焔様の従者ですよ

エドワード

そうだったな……だけど、辛くなったらおいで。汐音を幸せにする自信はあるからさ

汐音(しおね)


 エドワードが耳元で囁いた言葉は汐音にしか聞こえなかったらしい。トンっと肩を押されて船に乗る。

焔(ほむら)

何、言われた?

汐音(しおね)

いえ……


 横目で見る焔の視線から逃れるように汐音は首を横に振った。

汐音(しおね)

知ってますよ。エドワード様、焔の側にいても幸せになれないことぐらい

 彼は賢者様。王様と同じか、それ以上に崇められるべき存在。

 自分はその従者。主を護って死んだとしても問題のない、使い捨ての道具。

 身分の差がありすぎる。

汐音(しおね)

それでも彼が望む限り、私は彼と共に在ります

焔(ほむら)

汐音、命令だよ。膝をかせ

焔(ほむら)

寒いんだ、人肌が恋しい

汐音(しおね)

え?

 焔は寝ることに決めた。承諾なんて必要ない。当然のように寝る。

こうして彼女の膝で寝られるのも長旅だから出来ることだ。

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