朝早くに到着とは、相変わらず賢しいことよな
災禍
敵が一番油断するのは夜を過ぎた朝方。夜を越して緊張が解けた瞬間よ。知っておけば私が来る時間は知れたはず
相も変わらず嘆かわしい頭よな、轟鬼の爺
……ふん
災禍様、鬼の長にあたる轟鬼殿に対して言葉が過ぎまする。下手に敵を作るものではありませぬ
なあに、同族同士の諍いほど楽しいものはない。疑心暗鬼に陥った奴らを騙し転がすのはたまらんからな
まあ、今は人間の嘆くさまを見れるのだ。鬼の泣き面はまたの機会にしておこう
……相も変わらず殴りたくなるわ、あの餓鬼が
お控えなされませ。状況を打破するために我らが寄越されたのはご存じのはず。戦の勝利によってもたらされる平和を想えば、災禍様の小言などあまりに小さいと拝察しますが?
そして相も変わらず口が回りよるわ、狸が
餓鬼の子守はよほど骨が折れると見えるな?昔はそれほど舌は回らなかったはずじゃが
既に朝の霧に乗じて、我らの手の者が人間軍に潜り込んでおります。合図があれば、いつでも災禍様の策謀をお目にかけましょう
…………相も変わらず、人の話を聞きやしない。なんとも腹の立つ餓鬼どもじゃ
まぁそう仰らず。災禍様が来られて、鬼達に損はないはずですが
……期待してよいのじゃな?
無論
邪魔をするぞ
災禍!?
ほう、軍師はお前か、覚。どうりでぬるいと思っておった
おーおー着いたばかりなのに随分と口がお達者で。さすが災禍様は弁が立ちますねー
何しに来やがった
援軍に決まっておろう?
ただの援軍なら新手の軍師なんて着たりしねえさ。しかもお前みたいな奴なんかが。
簡単だ。我らの山も、人間に囲まれてばかりの貴様らに思う所がある。いち早い戦況の打開を目指すべく――
その原因である無能な軍師を引きずりおろして、主導権握ろうってか?
なんなら、サトリの力で覗いてみたらどうだ?
…………いや、遠慮しとく
ならばいい。次の戦の指揮は私が執る。口出しは許さぬぞ
…………りょーかい
覚様、お疲れ様です
……ああ
ひどくお疲れのようですが……何用かございましたか?
…………楓はいるか?
はい、ここに
…………
……っはぁ~~
覚様?
楓、出陣のお達しだ
えっ――――?