クレア

それにしても、シャロちゃんすごいね
ここにきてまだ1週間経ってないのに、もう皆と馴染んでる。

ノエル

クレアもシャロちゃんみたいに人に好かれると良かったんだけどねぇ

クレア

そうなんですよねぇ……
って!私皆に好かれてなかったんですか!?

ノエル

どうかしらねぇ

クレア

そんなことないですよね?

ノエル

もっと笑顔を振りまかないとね
ちゃんとポーズもつけて可愛らしく

クレア

こんな感じですか?

シャロ

あの、何してるんですか?

クレア

うわーーーーーーい!

ノエルとの雑談に興じていたクレアは突然の声に驚きすぎたのか、今までに出したことのない声を出して驚いた。

クレア

シャロちゃんはいつからそこにいたのかな!?!?

シャロ

クレアさんが片目を閉じて、片足上げて、アイドルよろしく痛々しいほどに可愛らしいポーズを決めてた時にはもう居ましたよ?

クレア

っ~~~~~~///////

クレアの顔がゆでだこのように真っ赤に染まる。その様子をシャロとノエルが楽しそうに見つめる。
ここ数日の間、屋敷の中でよく見る光景だった。

クレア

シャロちゃん絶対私のことバカにしてるでしょ……。

シャロ

そんなことないですよ?
クレアさんは尊敬できる先輩です

クレア

ま、そう思ってもらわなくちゃね

シャロ

ちょっといじり甲斐がある先輩ですね

クレア

にゃーーーーーー!!!

シャロ

まぁ、冗談はこのくらいにして、クレアさんのことを尊敬してるのは本当です。
ご主人様の側でのお世話も任されるくらい信頼されてるんですから

ノエル

そういえば、シャロちゃんはまだでしたね。ご主人様への挨拶。

シャロ

そうなんです。
早くあいさつしたいんですけどね……。

ノエル

まぁ、あの奥の部屋には限られた人か、マリアから許可をもらった人しか行けませんからねぇ……。

シャロ

奥の部屋……。

クレア

どうしたの?シャロ?

シャロ

いえ、何でもないですよ
残りの掃除終わらせて、マリアさんに報告してきますね。

そう言い残すと、シャロはパタパタと自分の持ち場に戻っていった。

クレア

シャロちゃん……。

ノエル

クレア。仕事に戻るわよ。

シャロ

この屋敷の最奥……。
この部屋に……。

誰!?

シャロ

やっと見つけた……。
アンタの命……。いただくよぉ!

えっ?

シャロ

この刃の先には致死量の毒が塗ってあるのよ?
これを受けた貴方は

シャロ

なにこれ……ガラス?

マリア

それは『裏写しの鏡』

ノエル

その鏡には貴女の対極にあるものを映し出すのよ。

マリア

そしてそれは貴女自身でもある

ノエル

つまり、あなたが毒を打ち付けた相手は自分自身

マリア

そしてその攻撃は

ノエル

貴女に

マリア

跳ね返る

ノエル

跳ね返る

シャロ

うっ……ぐっ……あぁ……

部屋の中に明かりが灯った。
そこには砕け散った鏡と、横たわるシャロの姿があった。
目は赤く光り、美しく気立ての良かった彼女の姿はそこにはなかった。

ノエル

いい子だったんだけどねぇ……

マリア

出来すぎてたのよ……
彼女は……

二人は鏡を見つめる。『裏写しの鏡』はなぜか、もう元通りになっていた。

マリア

私たちの仕事は、この鏡を守り続け、レイモンド家をずっと存続させること……。

そう言ってマリアは鏡を眺める。
ノエルはその隣でマリアを見つめ続ける。

マリア

なに?

ノエル

別に~
マリアさ、そろそろ貴女がその鏡を見たらどんな姿が映っているのか教えてよ。

マリア

教えるものでもないわ。
さ、明日も仕事でしょ

ノエル

はいはい

ノエルは、マリアの言葉を聞くと、ひらひらと手を振りながら部屋を出た。
マリアは鏡に布をかける前にじっと鏡を見つめた。
鏡の奥にいる姿はマリアそのものだった。

マリア

ずっと守らないと……

マリア

ずっと……

マリア

ず~~っと……

マリア

危ない危ない
こんな姿ほかのメイドには見せられませんね……。

そう言い残して、マリアは鏡に布をかけ部屋から出ていった。

マリア

こちらレイモンド家では新しいメイドを募集しております。やる気のある方でしたら年齢は問いません。等身大の自分と見つめ合い、ご主人様へ愛をささげられる方をお待ちしております……

第五話:ショウタイ

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