―― 一時間後 ――
はぁ…今日はいつも以上に疲れたわ…
こんなときはおいしい冷やしおでんで、心と体をリフレッシュしないと…あら?
…プロデューサー、どうしてここに?
私はここで遅い夕食でも取ろうと思って。この屋台、私のお気に入りの場所なんです
…えっ?
プロデューサー今夜は私の愚痴を聞くためにきてくれたんですか? …とても疲れた顔をしていたから…?
…愚痴は聞いてくれなくて結構ですけど、もしよかったらプロデューサーも、ここのおでん食べていきませんか?
―― 一時間後 ――
…大体ねぇ、覚悟のない子が多すぎるのよ。顔が可愛いとか、少し歌がうまいとか、それだけで生き残れるほど甘くないのに…
…嫌な仕事やきつい仕事も、新人のうちは断るわけにはいかないし、スタッフにだって意地悪な人や酷い人はいくらでもいる…
…あれから10年も経ったんだし、芸能界も少しは変わったんじゃないかと思ってたけど、やっぱり私も甘かったのかな…
…私、あなたに思いっきり愚痴ってるね。聞いてくれなくて結構です、なんて言って… …ふふっ、プロデューサー、優しいなあ…
つらいことが待ってるんだって知ってても、やっぱり歌が好きだから諦められなくて、結局またステージの上にもどってしまう…
…あなたが私にチャンスをくれたから、私、また歌が歌える。聞いてもらうことができる。心の底から感謝してるの…ありがとう
…お酒の力を借りて、いつもは恥ずかしくて言えないことを言葉にしてみました…ふふっ
見ていてちょうだい! そのうち私の歌で、あなたの事務所を業界ナンバーワンの大きさにしてみせるから
合言葉は『打倒、ミリオン!』
だからプロデューサー、ふたりで頑張っていきましょうね!