荒涼たる大地に紅く灯る火。
その国の名はアンタレス。
獅子たちの暮らすこの街に待つのは吉兆か凶兆か。

門番

旅人たちよ、何用か!

ゼロ

英雄アントニダスの息子ゼロ!
獅子王に面会願いたい!
滅びゆくこの世界を救うために!

門番

よかろう
王の居城へ向かうがいい!

俺たちは馬車を預け獅子の街に降り立った。

ゼロ

ふぅ…なんとか通れたな

アカネ

第一関門突破ってとこかしらね

ヨシオ

大勢押しかけてもよく思われないだろう
城へは前の馬車組で行ってくれ
俺たちは宿を確保しておく

ベルモント

ヨシオおじさん…疲れが出てますね
了解です
城へは僕ら3人で行きます

ヨシオおじさんは後ろの馬車組を連れて宿を探しに行った。

シーマ

…いま私さり気なく省かれました?

ゼロ

せっかくだが、不安なんだよ
俺たち3人に任せてくれないか?

シーマ

うーん
仕方ないですね

その時だ。
周囲の雰囲気が一変し、そいつが姿を現した。
漆黒の鬣の獅子。
誰よりも黒い鬣はすなわち当代最強の獅子の証。

イオ

ヒトよ
この国になんの用だ

彼はただ歩いているだけ、ただ言葉を発しただけなのに俺はその圧力に押しつぶされそうになる。
必死に言葉を返そうとしたその時…

シーマ

勇者一行です!
獅子王に会いに来ました!

シーマが圧力に耐えきれなかったのか答えた。

ゼロ

シーマ!黙って!
俺が答えるから

イオ

勇者…だと?
どいつが勇者だ?

ゼロ

僕がそうです
アントニダスの息子、ゼロ。

イオ

ふむ…
時期が悪かったな
今、この国で勇者とは侵略者のことだ

ゼロ

なっ!
どういうことです?
僕たちに侵略の意思などありません!

イオ

西の勇者の先兵よ…
あるいは将来そうなる者よ…
こ こ で 息 絶 え よ

黒き獅子イオの体表面が「硬化」していく…
そして…

イオ

GAAAAAAAAAAAAAAA

咆哮とともに最強の獅子が突進をしてきた。
避ける間は無い。
それは必殺の一撃であると一瞬で理解した。

アカネ

がはっ!

死の一撃から俺をかばったのはアカネだった。

ゼロ

アカネ…

倒れたアカネを抱き起す。

アカネ

逃げ、て…

アカネは息も絶え絶えに言葉を吐き出した。
彼女の「炎」で幾分威力を殺したようだがそれでも出血が酷い。
一目で長く持たないとわかった。

ベルモント

クソッ!

ベルモントは彼の「血の力」である「風」とダガーで応戦を始めていた。
だが、どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだ。

頭の中が真っ白だった。
目の前で失われようとしている命。
黒き獅子。
西の勇者の先兵。
何が起こっているんだ…
俺はどうしたらいいのだ…

アカネ

しっか、り、しな…さい…
あんた、ゆう、しゃ…でしょ!

アカネはそう言い、力ない拳で俺の胸を打った。
あまりにも弱弱しい一打。
だが、俺の胸に火を灯すにはそれで十分だった。

ゼロ

ふーーーーーーっ

目を閉じ深呼吸。
それで頭のモヤは晴れた。

ゼロ

シーマ、アカネを頼む

シーマ

えっ!あっ!ハイッ!

おろおろしていたシーマにアカネを任せ、立ち上がる。

ベルモント

がっ!

ボロボロになったベルモントがこちらに飛ばされてきた。

ゼロ

ありがとうベルモント
俺…行くよ

ベルモント

…オマエッ!やめろっ!
俺はまだ…

ゼロ

アカネによろしく…

そう言って俺は黒き獅子に相対した。

アンタレス~暴嵐襲来~

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