外に出ると、鐘の音はますます大きくなる。
外に出ると、鐘の音はますます大きくなる。
ヨルダさん、これは一体
ミリヤ!
ゲンナイさんの声が響く。
組合の職員全員で避難の案内頼む!
分かったわ。
ミリヤさんと同じ緑の服を着た人達が建物から出て方々に走っていった。
スライムですら服を着ていらっしゃる…
私達は食料庫の方を見てくるかね。
うん、行こうママ!
リーシャさん達は俺を置いて走っていってしまった。
うぇーんママ~
置いてかないでママ〜
…なんでもないです。
俺の周りには、先程の俺の無職宣言に笑いを堪えていた屈強な戦士達しか居なかった。やっぱり泣きたい。
ヨルダさん…
縋るように長老へ話しかけると
クロガネさんは魔物と戦った事はあるのかな?
今の状況とまるで関係の無いような質問に戸惑いながらも俺は答える。
あっと…あります。赤いスライムと戦ったのが一度だけ。
ヨルダさんは頷きながら遠い目をして言った。
この世界には、魔物などいなかった。
うん?魔物がいないって、人間だけだったって事か?
全ての種族が平和に、助け合って過ごしておった。
だが三年前のある日を境に平穏な日々は終わってしまった。
あらゆる種族の中から、他人を傷つけるモノか出てきたのじゃ。
その数はたちまち膨れ上がり、世界には我らと魔物が存在するようになってしまった…
それは、裏切り者が出たという事ですか?
それならば…まだ良かった。
裏切り者であれば、我らはここまで苦しむ事も無かった。
ここまで残酷な事をする必要も無かったのじゃ。
…どういうことだ?
だって普通に異世界では魔物討伐とかやったりするし、人間に協力的な魔物もいるけれどそういう方が珍しいんじゃ…
ふと、今朝の光景が頭に浮かぶ。
キメラの里。
キメラと言うと俺の中では人を襲う魔物というイメージがある。だから、里があるのかと少し驚いたのだ。
敵の代名詞であるような魔物が人間と共に暮らしている。
異世界での敵の基準とは何だったか。
例えば
人を傷つけるから
魔王の手下だから
世界征服を狙っているから
主人公と敵対しているから
そのぐらいだと思う。
だが先程の話を聞いても、魔王が出たとかそういう訳ではないように思える。一気に出てきたらしいし。
もしかするとクーデターか?
…見てごらん。
ヨルダさんに話し掛けられ、我に返る。
彼の指した方向には、里の周りに連なる山々
から流れ出る
あかぐろい血。
へぅっ
変な声を出すしかなかった。
山が血を流す。
おかしな話だが、本当にそうとしか思えなかった。
その血は、陽が暮れて翳り始めた山肌を流れていてなのによく目立ち
赤と黒のコントラストとも言えない、不気味な色味に激しい嫌悪感を覚える。
思わず口を抑え目を背けた俺の耳に、呟きが。
アレが我らの敵であり
そして
”仲間達の成れの果て”じゃ。