彼がやってきてから数日、寝静まったかを確認するために家の中を回っていると、部屋の中からすすり泣く音が聞こえた。

入ってみると、彼は布団の中に籠りながらわなわなと震えていた。
今までに奪ってきた命が、寝ようとするたびに言ってくるらしい。

何故殺されねばならなかったのかと、血まみれの体で。

怯えて、死にたい殺して死にたいと叫び続ける彼を、私は静かに抱き寄せた。

彼のおかれた状況がよく分かるからこそ
彼の心境がよく分かるからこそ

私は彼の頭を撫で続けるしかなかった――――

シャルム・ソー

とりあえず、ひとつだけ気になってることを消化しないとな。それが分かれば一気に片が付くんだけど

カアアアアア――――

シャルム・ソー

二回目だし、当たるか分からないけど……やってみるか

シャルム・ソー

陥没せよ!メテオリット!!

――――

シャルム・ソー

……聞こえた

シャルム・ソー

マジー!みんなの周りに防壁張って!!巻き添え食らわないように!!

マジー・プリエール

……任せときな!

マジー・プリエール

リュミエール・イノサンス!!

榊 風音

シャルム君は何をするつもりなんだ?

マジー・プリエール

さあ?ただ、よほど強力な魔法っすよ?わざわざこっちに注意喚起してるくらいっすから

カシェ

……橋が崩れる可能性はどのくらいですかな?

マジー・プリエール

ざっと8割

榊 風音

……高すぎでしょう

シャルム・ソー

行くよ、水霊さん

カアアアアア――――!!

カシェ

あれは、禁呪の歪んだ魔法陣!?

シャルム・ソー

根絶せよ!!デザント・アンフェール!!

榊 風音

なんですか……あのおぞましい炎は

マジー・プリエール

あれはいわゆる「獄焔」って呼ばれてるものっす。周囲一帯をただ焦土に変える。すべての水分を吸い取りながらね

マジー・プリエール

あいつ、本当にチート級の魔法出してきやがった

シャルム・ソー

行け!獄焔!!

カアアアアア――――!!!!

カシェ

炎が……収まったか

榊 風音

……すごい。これが魔法

シャルム・ソー

……ふぅ

シャルム・ソー

……ぁ

マジー・プリエール

倒したみたいだぞ。よくやったなシャルム

シャルム・ソー

…………うんっ

…………っ

マジー・プリエール

アンタ、なんで神のしもべなんかやってるんですか

マジー・プリエール

あんなロリコンの自己中神なんて、仕えても意味がないと思うんすけど

……あの人は、私を必要としてくれた

将軍になっても変わらず私を愛してくれた。神になっても、私のことを必要としてくれた

今まで地獄しか見てこなかった人が突然誰かに必要とされた時にどれだけ嬉しいか……きっとあなた達には分からない

あの人に会えなくてもいい。陰としての存在でもいい。必要としてくれたから。私が彼を愛していたから

変わってしまっても、あの人は変わらないから…………

榊 風音

この人は……セヘル様の愛人だったのか

マジー・プリエール

……同情も理解もしねえよ、そんな愛なんて

シャルム・ソー

必要としてくれる人は神一人じゃないんだってこと、ずっと気づけなかったんだね……

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