彼が大好きだった。
何度も彼に挑んでは負けて、その度にいつか彼に勝ってやると心に誓って。

結局、彼が帰国するまで勝ったことはなかったが。
それでも彼は、いつも私に敵わないと言った。

どうして?と聞いても、ただ敵わないとだけ。

彼のことが大好きだった。
純粋に、友として大好きだった。

たとえ、これから先私達の国と彼の国が仲たがいして喧嘩することになっても
どうしようもない理由で彼を嫌わなければならないとしても
私はそんなの無関係に、彼を信じれる。

だって、それが「親友」だと思うから。

古森

着いたぞ、水男殿

ソール・グルナディエ

助かる、古森

古森

本当にここでいいのか?十四郎将軍の進行経路には他に邪魔しやすい場所もあっただろう?

ソール・グルナディエ

いや、ここでいい

ソール・グルナディエ

これからのことを考えれば、広い方がいい

古森

そう、か

ソール・グルナディエ

古森、礼を言う。あとは私一人で大丈夫だ。お前は村に帰った方がいい

ソール・グルナディエ

マジーも今頃は出発している。若奈がいい加減心配しているだろう

古森

それは、いつ村長に襲われるかを、か?

ソール・グルナディエ

……マジー

古森

水男殿、君が考えていることは分かる。万が一君と一緒にいるところを見られたら逆賊と疑われてしまうから。そうだろう?

ソール・グルナディエ

…………

古森

今更構わないさ。それを言うなら、私たちが水男殿を匿っていた時点で逆賊同然だ。だったら今更尻尾を巻いて逃げる必要もないだろう

ソール・グルナディエ

……そうか

古森

いっそ、腕でも組んで待ってるか?

ソール・グルナディエ

勘弁してくれ

古森

来たみたいだな

ソール・グルナディエ

古森、改めて礼を言う

古森

私は特に何もしてないぞ

ソール・グルナディエ

ああ……行ってくる

ソール・グルナディエ

十四郎……あの時自分自身に誓ったこと、私は忘れたことはない

ソール・グルナディエ

たとえ敵味方になったとしても、私は君の親友だ

ソール・グルナディエ

我が第一魔法源を解放せよ!!魔剣・クロワ・アルシュ!!

榊 十四郎

……お前は

ソール・グルナディエ

…………

ソール・グルナディエ

止めに来たぞ、十四郎

榊 十四郎

……ソール

貴様、ディスナティの人間か!よくも榊将軍の前でその醜態を晒してくれたな!!弓兵部隊、構え――――

榊 十四郎

止めろ!!彼に手を出すな!!

榊将軍……?

榊 十四郎

……貴様にひとつ忠告をしておこう

は…………?

榊 十四郎

今度彼を侮辱してみろ。俺が直々に貴様の首を刎ねてやる

も、申し訳ありません…………

榊 十四郎

さて、ソール。貴様はなぜここにいる?ディスナティに帰ったのではなかったか?

ソール・グルナディエ

……ひとつ聞いてもいいか?

榊 十四郎

なんだ?

ソール・グルナディエ

何故、私を帰した?

榊 十四郎

…………

ソール・グルナディエ

いくらなんでも、これから戦争しようという国の戦力等は将軍である君が知らないはずもない。当然、私が数年前にエタ国をたった一人で滅ぼしたことも耳に入っているはずだ

ソール・グルナディエ

それなのに、何故私をあのまま帰した?せめて城に軟禁でもしておけば私が戦争のことを知るのが遅くなって、その隙に攻め込むこともできただろう

ソール・グルナディエ

風音から私が十国にいること、そして戦争のことを知らないだろうということを耳に入っていたはずなのに

榊 十四郎

…………

ソール・グルナディエ

本当は止めてほしかったから、じゃないのか?

榊 十四郎

もしそうなら、どうするというんだ?

ソール・グルナディエ

決まっている

ソール・グルナディエ

全力で止めるだけだ

榊 十四郎

…………いいだろう

榊 十四郎

剣技で俺に一度も勝てたことがなかったことを忘れたのか?

ソール・グルナディエ

何年前の話だ

榊 十四郎
ソール・グルナディエ

うおおおおおおっっ!!!!

pagetop