【83】




























どうもツイていない。

予定ではさっさとお菓子を手に入れて
空いた時間で遊んで
帰るつもりだったのに。

せっかく町の外に出たのになー


外の世界で獣人の扱いが
悪くなっているという噂を聞いてから

町の大人たちは
過剰にボクたちを町の外に
出さなくなった。



だからこのイベントを
もう何年も前から
楽しみにしていたのに。

根を詰めすぎてるのかも


きっと疲れているのだろう。
こういうときは気晴らしに限る。

少しくらいならいいよね



さっきからいい匂いのする
あの店に入ってみようか。

そして
自分のために注文して食べよう。
イベントのことは忘れて。



あ、でも美味しかったら
持って帰ればいい。








それか思いっきり遊んでみよう。
声を上げても、身体を動かしてもいい。

きっとストレス発散になる。








買い物するのもいい。

あまり持ち合わせはないけれど
きっと地元とは比べ物にならないほど
品揃えが豊富だろう。


かさ張るものは無理だけど
ペンダントとかなら……



そこのお嬢さん、見ていらっしゃい


ふいに声をかけられた。


声のしたほうを見ると

こっちこっち


ひとの良さそうなお兄さんが
手招きしている。







露天商のようだ。
彼の前のテーブルには
小さなコマが

いくつもくるくると回っている。


変わったかたち

そうでしょ。これはうちでしか扱ってないからね

ほら、回してごらん。
30分は回り続けるよ

うそだぁ


そんな大げさな、と思ったけれど
回してみるだけならタダだし
面白そうだ。


ボクはコマをひとつ手に取ると
くるりと回してみた。

うわぁ、ホントにずっと回ってる!

面白いでしょ。
上の青いところをよく見てごらん。
いろんな模様が見えてくるから

へええ


言われたとおり、
ボクは青い部分を見詰めた。

切り抜かれた穴に
金色の枠組みが見え隠れする。





鳥?

猫?


それとも……








あ……れ……?


なんだか目がぐるぐる回る。


ぐるぐる

ぐるぐる


ぐるぐるぐるぐる……















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