8分かけてようやく学校に到着した。
意外と小綺麗な校舎だ。

江岸 梨奈

また後でねー!


江岸達と別れ、職員室へ向かう。

普通ならトロフィーが飾ってあるはずの職員室前の廊下はすっからかんだった。

工藤 柊作

寂しい廊下だな…

ドアの側まで来たものの、ノックするべきかそのまま開けるべきか変な所で悩んだ。
すると、逆にドアが開き、男性が一人出てきた。

工藤 柊作

あ、あの……

浦部 凛

おやぁ?


飄々とした先生だった。

浦部 凛

おかしいですねえ。ここの生徒の顔は全員知ってるはずなのに、私は君の顔をご存じない。お客さんか…と思いきや君はこの学校の制服を着ている。これはいったいどういうことなんでしょうねえ?

いっぺんに喋られて二の句が継げない。
なんだ、この先生?



その時、先生の背後から女性の声がした。

浦部先生、どうしましたか?

浦部 凛

これはこれは時雨先生。私は今人生最大の難問に挑んでおります。このような難問に出逢えるとはまさに天の導きでしょうか


発言がいたいよ、この人…。

どれどれ、その超難問のお手伝いでもしてあげましょうかね

浦部 凛

なっ…!?止めてください!これは私の問題なのです!私が解かねば!!


途端に男性が職員室に引きずり込まれ、姿が見えなくなる。
呆然としていると、中から女性が呼んできた。

入ってきなさい

工藤 柊作

は、はい!

戸惑いと緊張で手と足の動きが一致していた。

中には数人の教師がいた。
だいたい10人ほどだろうか。

はじめまして


周りを見ていると、再び女性の声。
目の前には若い女教師が座っていた。
年も俺達とそんなに変わらないように見える。

時雨 詩織

あなたが今度転校してきた工藤柊作くんね

若い先生はすっと手を差し出した。

時雨 詩織

あなたの担任の時雨詩織です。よろしくね

工藤 柊作

…どうも


ぎこちなく握手を交わす。
温かい掌だった。

浦部 凛

先程は失礼いたしました


次にやって来たのは、さっきの男性教師だった。

浦部 凛

日本史を受け持っている浦部凛と申します。先程の失礼を水に流して広い心で授業に臨んで下さい

工藤 柊作

ど、どうも…


さっきの今のため、どうしても顔がひきつってしまう。
悪い人じゃなさそうだけど…。

時雨 詩織

じゃあ工藤くん


時雨先生が席をたった。

時雨 詩織

行きましょうか

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