王室から王子を弟子として育てろと言われた時は猛反対した。
弟子など生涯とるつもりはなかったし、何も教えられるものはないと思っていた。

おまけに、やってきた彼は補助系の魔法しか使うことができなかった。
何故私の元に来たのだろうとすら思った。

しかし、彼は常に前を向いていて、周囲に気配りができた。
それは私にはなかった魔法だった。

ああ、なるほど
彼は、私の先生でもあるらしい。

マジー・プリエール

お前……

レーグル・ブリエール

お兄様、僕は未だに理解できないんです。何故、あなたがソール・グルナディエの弟子に選ばれたのか

レーグル・ブリエール

あなたとサポートの魔法しか使うことができず、逆に僕は攻撃魔法しか満足に使えなかった。双子というわけでもないのに、僕とあなたは極端すぎて釣り合っていた

レーグル・ブリエール

ですが、ソール・グルナディエはたった一人で国を滅ぼせるほどの攻撃魔法の達人。そんな人に教えを乞わせるには人選ミスも甚だしい

マジー・プリエール

それで、本当なら自分が先生の弟子になるはずだったのに……ってか?

レーグル・ブリエール

ええ

風ノ助

つまり……マジーに対する嫉妬か?

マジー・プリエール

そのとおりだ風ノ助。もっと言ってやれ

チャーム

しっと!!

風ノ助

お前が言うの!?

カシェ

sit!!

マジー・プリエール

お前も乗るな!!

レーグル・ブリエール

それに、弟子になるということは一時的に地位を市民レベルまで下げられることも意味する

マジー・プリエール

そして、再び地位を取り戻すには師から一人前と認められる以外にはありえない。それがディスナティが若い魔法使いを育成するために用いてきた方法

レーグル・ブリエール

そして、王族が市民として生活できる唯一の手段でもある

風ノ助

……つまり?

アムレート

王族が身分を変えて生活できるってことよ

カシェ

考えてもみたまえ、王族はいわばディスナティの顔だ。顔が潰れればディスナティは崩壊すると言ってもいい

カシェ

哀しいことに、スパイとして国に潜り込み、魔法の教育と偽って暗殺しようとした事例が何件もあった。それ以来ディスナティは市民階級の魔法に熟達した者に一時的に王族を預ける制度を設けている

ソルセルリー

けど、その制度もリスクは非常に高い。だから、歴代の王族でもなんとか貴族階級の魔法使いに頼むことがある

レーグル・ブリエール

そう、それが僕だ。結局僕は両親の元を離れられぬまま、横暴な師匠の言うことを聞きながらなんとか生きてきた。整備され過ぎた路上を闊歩してる気分だった

レーグル・ブリエール

けど、お兄様は5年経っても帰ってこなかった。諦めた両親は僕に更に修行の負荷をかけた。お前がこの国を背負うんだとね

レーグル・ブリエール

本来なら第二王子であるあなたが今回の指揮を担うはずだった。けど、あなたが5年もソール・グルナディエの元を離れないせいで僕が暫定的に第一王子に上げられ、今回の指令に抜擢された。拒否権など、あるはずもなく

レーグル・ブリエール

僕はそんな中で必死に居場所を作って生きてきたんです。もしここで軍を退けば、僕の居場所は永遠に失われる……それは絶対に嫌なんです!!

マジー・プリエール

レーグル…………

風ノ助

どうする?なんか説得できなさそうな雰囲気なんだけど

マジー・プリエール

……一応、逃げる準備だけしておいてくれ

風ノ助

えっ?

マジー・プリエール

レーグル、お前の言い分は分かった。そして、その原因が大方俺だということも理解した

マジー・プリエール

だが、それでも退くことはできない。こっちも先生に任されて来てるんだ。何の成果も挙げれないままでは帰れない

マジー・プリエール

そっちが折れるまで、こっちも粘らせてもらうぜ

レーグル・ブリエール

……むしろ、そっちが折れてくれればいいんだが

………………

……………………

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