【85】
まいどありー!
なんの問題もなく飴を買い、
飴屋の暖簾をくぐった時だった。
おつかいか?
あ――――!!
なんでここに――――!!
そこにいたのは他でもない
人買いのネリーだ。
王子のくせにフラフラ出歩いている
徳田家の三男坊、みたいな奴だ。
三男坊と違うのは
側近に理解がないということと
町人に親しまれていないということと
一緒になって悪事を働くと……
待て
なんであんたがここに!!
もしかして
また誰か誘拐しようと
物色しているところだったとか!?
だとしたら
事情を知っているボクが
阻止しなくては!!
みなさーん! 気をつけてくださーい!!
ここに人買いが、
わあ! 待てって!!
ボクは路地裏に引きずり込まれた。
なに?
そりゃあこっちの台詞だ。
戻ってきたかと思えばなんだお前は
戻って?
なんだ? 痴呆か?
ダリスルーラは忘れる程度の町だったかよ
いや、ここがダリスルーラってことは知ってますが
なら俺がいたって問題ないだろうが
……なんで?
……
……
……もしかして、お前の中じゃ雲の町とダリスルーラは別物か?
え!? じゃあここは雲の町だったの!?
そう言えば前に来た時に
町の名前は聞かなかった。
雲の上にあって喋る雲がいたから
適当に名付けていただけで
……
……わかった。飛行船用意してやるから帰れ
えええ!? でもまだ
その飴でいいだろうが
えー―――
お前、今、こんなショボい飴玉なんか持って帰るの嫌だ、とか思っただろ
え? いや、ええと
うっかり過ぎるんだよ。なんでこう何回も人買いに捕まるんだ
むー
さっさと帰れ
ボクは