この気持ちを言葉にすれば恋だろう。
君のためならどこまでもできる。どんなことだって。
君のためならば。
この気持ちを言葉にすれば恋だろう。
君のためならどこまでもできる。どんなことだって。
君のためならば。
ふう。とりあえずこんな感じかな
終わった?
ああ、一通りの見直しは終わったよ
そう。それじゃあちょっと休憩しよっか
そうだな
あ! そうだ!
なんだよ?
この近くにさ、最近オシャレなカフェができたんだって! 一人で行くのもなんだし、司、今から付き合ってよ
なんで僕が……一人で行ってくればいいだろ?
この私が誘ってるっていうのに断るっていうの?
勉強の合間の小休止になんでわざわざ外出てカフェなんか行かなきゃいけないんだよ。言っておくけど、僕だってそんな余裕があるわけじゃないんだからな?
ちょっとくらい大丈夫だって!
全国模試トップの秀才に言われても説得力無い
逆に考えなさいよ、私が休憩しても大丈夫って言ってるんだから本当に大丈夫ってことになるでしょ?
凛には前から言ってるだろ? 僕は大学で勉強したいことがあるんだ。そのためにはこんなところで足踏みなんかしてられない
それは……そうだけどさ
今の僕はいくら勉強してもし足りないくらいだと思ってるんだ。悪いけどカフェは別の人を誘ってくれ
……あんた以外とは行く気なんてないわよ
ん? なにか言ったか?
なんでもない!
変な奴だなお前……
司にだけは言われたくないわよ
なっ! それは心外だ!
心外? こんなところで勉強してるのに?
しょうがないだろ。 ちゃんと勉強しないと大学いけないんだから
そういう意味じゃないんだけどね……
司は元から頭いいんだから別に勉強なんてしなくても大丈夫だって。だからちょっとくらい……
だからお前に言われても説得力ないんだって
むー
……中学の頃は僕の方が勉強教えてたのになぁ。今じゃすっかり逆転しちゃったな
ふふん! 高校入ってから頑張ったから!
どうしてそんなに頑張ってたんだ? なんか寝る間も惜しんで勉強してたっておばさんに聞いてたけど
え!? そ、それは……
それは?
べ、別にいいじゃない! そんな細かいことは!
細かいか?
高校に入って勉強が思った以上に楽しいって思っただけ! 以上! これ以上この話題禁止だから!
いや、でも……
禁止だから!
あ、ああ……凛って時々理解できないよな
理解できないのはこっちの方よ
え? そう? 僕ほどわかりやすい人間はいないと思うけど
そのわかりやすい人間が、どうして自習にわざわざこんな場所利用してるのよ。普通ありえないでしょ
こんな場所って第一自習室?
そう。普通の受験生なら第三自習室を使うはずだわ。第一を使うなんてありえない
ありえないかなぁ……
司は知らないの? この『第一自習室』が周りからなんて呼ばれてるのか
なんて呼ばれてるの?
受験生の墓場よ!
また随分とひどいネーミングセンスだ……
設備は第三に比べて劣悪。あそこに比べたらとても勉強できる環境じゃないわ。空調は調子悪いし、机も椅子もボロボロだし……いいところなんて何一つないじゃない!
いや、第三はいつも混んでて使いづらいというか……
しかもここを利用してる人達っていつも勉強しないでふざけてるって話でしょ!
勉強しろっつーの!
否定できないのが辛い……
受験生の墓場っていうのは言い得て妙だと思うわ
あはは……
それにこれは噂なんだけどね……
噂?
ここを利用していた受験生が亡くなってるんだって! なんか不吉じゃない?
たかが噂でしょ?
司、こんなところで自習してたら伸びる成績も伸びなくなるわ。私と一緒に第三で勉強しましょ? そっちの方がきっといいから!
いや、どこで勉強するのかくらい自分で決めるって。それに案外ここも快適なんだよ? 頭のいい先輩達もいるし
そういうことじゃなくて!
随分と騒がしいわね。自習室ではお静かに。でしょう?
渡辺さん……
新田君? 渡辺って呼ばないでって言ってるでしょ?
すいません、咲さん
なっ!? 司! この人誰!?
ああ、ここでよく一緒に勉強する渡辺咲さん。咲さん、こっちは僕の幼馴染で松山凛っていいます
松山凛……この子ってひょっとして全国模試で一位の?
ああ、よく知ってますね
名前だけは覚えてたのよ。講師の人が騒いでたから。我が校始まって以来の快挙だってね
………
会えて嬉しいわ。渡辺咲よ。しがない浪人生。良ければ咲って呼んでちょうだい?
松山凛です。よろしくお願いします。『渡辺さん』
あ、おい……
あら? 凛ちゃんもそういうタイプの人?
司。私、今日はもう帰るから
え? もういいのか?
うん。後は家でやっちゃう。司も『こんなところで』遊んでないでちゃんと勉強しなよ?
いや、遊んでるつもりはないんだけど……
それじゃあ『渡辺さん』。司のことよろしくお願いしますね?
え、ええ……
ふんっ!
なにか気に障るようなこと言っちゃったかしら?
さぁ……
私の知らない君が見えてくる。嬉しいはずなのに少し痛い。
できることなんて一つだけ。
君の隣を歩くこと。そのためだったらどこまでだって。
私はどこまでだって。
君と一緒にいられるのなら。