朝の岸ノ巻は海が近いせいか、少し肌寒かった。
朝の岸ノ巻は海が近いせいか、少し肌寒かった。
俺はバッグに弁当と水筒だけを入れて江岸と歩いていた。
…車が多いな
次々に横を抜かしていく車を見て呟いた。
江岸が答えた。
さすがに岸ノ巻もそんな田舎じゃないよ。自転車しか車道通らないと思った?
ぐうの音も出ずに頬を赤らめる。
岸ノ巻に対する印象を少し改める。
それよりさ、どうする?工藤くんの自己紹介
物凄く顔がキラキラしている。
なんでお前が興奮してるんだよ。
普通に名前言ってよろしくお願いします、で良くないか?
えぇー!ダメだよ工藤くん!そんな都会スタイル、岸ノ巻では通じないよ
自己紹介に都会も田舎もあるか。じゃあ、岸ノ巻の自己紹介ってどうやるんだ?
自己紹介の時に自分の特徴を言うのよ。それが岸ノ巻スタイル!
なんでお前がそれ胸はって言うんだよ。俺と初めて会ったとき、しなかったろ
工藤くんの特徴は…
こちらの言葉を完璧に無視して江岸は顔を覗き込む。
……根暗?
…………
かなり真剣な表情で言われて逆にムッとする。
江岸を置いて学校へ向かう。
ゴメン、工藤くん!冗談だから!!
江岸にバレないようにため息をつく。
なんでこんなやつと友達になろうと思ったんだ、俺…
もはや自分の気の迷いを穴に入りたくなる程に後悔する。
ようやく追い付いた江岸が隣でしきりに謝っている。
かなり呆れる。
本当に接するの下手だな…
今度は本人の前で堂々とため息をついてやる。
途端に
あーっ!何そのため息!まるであたしに呆れたみたいじゃない!!
実際、呆れてんだよ。
あれ、梨奈じゃん
今日は早起きだねぇー
急に声が聞こえた。
江岸が瞬く間に笑顔になる。
どれだけ感情の起伏が激しいんだ。
おはよーーー!!
俺の横で手をブンブン振りだしたと思うと、俺の腕を掴んで走り出した。
当然俺は引っ張られる形になる。
誰、ソイツ?
見ない顔だねぇー
…………
そろって上から発言。
朝からずいぶんイライラさせられる。
さすがにイライラが伝わったのか、江岸が注意する。
二人とも、上から発言止めなよ!だから二股かけられたり、彼氏に夜逃げとかされるんだよ!もう少しあたしを見習いなさい!!
…こいつも十分上からだった。