妖怪探偵・稲田実


プロローグ

夕日に包まれた静かな校舎に、チャイムが響いている。


人気のない廊下に、ランドセルを背負い、小走りで並ぶ篠田翔と岡村時也の姿があった。


その廊下の片隅、壁には大きな鏡が取り付けられている。


古い鏡はどこか不気味で、怪談話の種にもなっていた。


薄暗い時間に前を通るのは不気味だが、昇降口にたどり着くにはここを通らなければならない。


翔と時也は鏡の前に足を踏み入れた。

翔…

鏡を指差し青ざめている時也。


翔はその指の差す先を見た。


鏡の中の翔と時也がニヤニヤと笑いを浮かべながら手を振っている。


その後ろに見覚えのある同じ年頃の3人の子供の姿が見えた。


振り返るが、そこには誰もいない。


2人しかいないはずなのに、鏡にうつる5人の姿…。

な、なんだよこれ…!

驚き、目を見開く翔。


その翔をあざ笑うように、鏡の中の翔が笑った。

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