私がお薬を貰って花畑に戻る途中、一発の銃声が聞こえました。
私がお薬を貰って花畑に戻る途中、一発の銃声が聞こえました。
そこには山羊さんと猟師さんがいて、猟師さんからは硝煙の臭いがしていました。
あの子は犬じゃなくって狼で、山羊さんを襲っていたみたいなの。でもあの子はそんなことしない、良い子だと思うのよ。その後山羊さんは家族殺しで捕まったみたいだし、あの子は悪くないじゃない。
でもみんなは、あの子が悪い、もしかすると家族殺しもあの子の仕業なのではないかといいます。
……なんで? なんで、私の好きになった人達は、死んでしまうの?
…………
……
今日も、あの花畑に行く。彼と会って、あの子と別れたここに。
……今日も一人。
おばあちゃんの作ってくれた新しい頭巾。前とあまり変わりはないが、彼との思い出がまた消えた。
…………はぁ。
そうやっていつものごとく過ごしていると、珍しく人が現れた。フードを深くかぶっており、顔はよく見えない。
ああ、いた。おい、お前。俺の所で働かないか?
私……ですか?
ああ、そうだ。食事を作ってくれればいい。給料は食材と食事、でどうだ?
……
いかにも怪しい内容。しかし、ローティアはそんな判断をするほど平常でなく、失ったことから立ち直れるほど大人ではなかった。
はい、わかりました。
ああよかった。助かる。俺は……ヴァインだ。お前は?
ローティア、です。
そうか。……さ、行こうじゃないか。ほれ。
……どうも。
ここだ。
うわぁ……。
男が案内したのは小屋。ここが彼の住処らしい。表には何かの骨が転がり、あまり掃除もされていない。
キッチンもひどい有様で、食材はあるのだが……ありすぎている。
……
ちらっと男を見ると、「料理は苦手でな」と頬を掻いていた。
……わかった。やってみる。
ああ、頼んだぜ。泊まる場合、部屋も好きな所を使っていい。家に帰る時は言え。……あ、朝と夕の分はあらかじめ作ってくれていると助かる。
……ん。
敬語が面倒くさくなりなんとなく止めてみたが彼は気にしないらしい。
そのことに安心し、ローティアは仕事を始めた。
……そして、一週間の時が過ぎた。
ねえ、ヴァインさん。
なんだ?
どうしてヴァインさんは顔を見せないの?
あー……えーっと……。
ああ、大丈夫よ、見せなくても。……まぁ、酷い傷があろうが、狼だろうが気にしないけれど。
……あー、そういう奴だったな、お前。……いいぜ、教えてやるよ。
本当に!
ああ。その代わり、お前も俺のお願いをきいてくれ。
ええ、わかったわ!
じゃ、脱ぐぜ。
フードに秘められた顔。どんなものだろうかと高鳴っていた胸の音が、別の理由で速まった。
だって、だってあの顔は……
おお、かみさん?
ヴァルヴェルトでもいいぜ?
えっ、えっ!? あの時の、犬?
何度も言うが、狼な!
……なんで、いるの?
あー、あれだ。何度殺そうが、俺は何度だって復活する、みたいな?
……まあ、そういうことにしておくわ。
で、俺からのお願いだ。……友達と喧嘩して、そいつが出て行っちまったんだよ。だから、帰ってくるまで一緒にいてくれないか?
……一つだけ。一つだけ、変えてくれるなら。
ん? どこだ?
……帰ってきてからも、一緒にいさせて。
……。
了解だ!
こうして、赤ずきんと狼は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし……なんてね。
ヴィルヘルムー、ご飯の仕度ができましたよー。
はーい、わかったよ兄さん。すぐ行くー!
まったく。何をやっていたのですか?
へへー、内緒。
はぁ……。どうせまた物語を見ていたのでしょう? 言っておきますが、内容は変えてはいけませんからね。変わらぬからこそ、意味があるのです。
はーい。