城下町からは少し外れ、森の奥へと進んでゆく。
あたりに灯りはなく、昼は木漏れ日が差し込み、夜は月光が照らす。散歩をするにはうってつけの場所になる。

その森を抜けた先に一軒の屋敷が建っている。
そこはレイモンド家。
何代にもわたりこの土地を治めてきた権力者の屋敷である。

その屋敷では個性豊かなメイドが働いていた。
街では常にメイドの募集が行われており、張り紙が沢山してあった。
メイドを目指すものも、目指さないものも。
誰もが知っているという有名な張り紙であった。

その張り紙にかかれている言葉とは……

マリア

こちらレイモンド家では新しいメイドを募集しております。やる気のある方でしたら年齢は問いません。等身大の自分と見つめ合い、ご主人様へ愛をささげられる方をお待ちしております……

レイモンド家のメイド事情

シャロ

ここがレイモンド家かぁ……
上手くやっていけるかな……

レイモンド家の屋敷の前に一人の少女が立っていた。
彼女の名はシャロ。
彼女がこの場に来たのはほかでもない。レイモンド家のメイドになるために来たのだ。

シャロ

なんか緊張してきた……

マリア

どうかされましたか?

シャロ

えっ……
あっあの!私ここで働きたくて来たんですけど……

マリア

あなたが手紙を送ってくれたシャロさんですか?

シャロ

はい。シャロ・コレットです

マリア

私はマリア・クロック。
マリアと呼んでください。

シャロ

よろしくお願いします。マリアさん

互いに挨拶を済ませたところでマリアが屋敷の中へ案内する。

マリア

ところで、シャロさん?

マリアが後ろからついてくるシャロに向き直る。

シャロ

なんでしょうか?

マリア

ここの募集のチラシはご覧になりましたよね?

シャロ

はい。読みましたけど……

マリア

そこにかかれている言葉は必要とする人材を指す言葉です。
ここで働くのであれば、頭に入れておいてくださいね。

シャロ

分かりました……

そう言ってマリアはまた前を向き歩き始めた。
シャロはどういうことだろうと思いつつも駆け足で後ろを追った。

マリアがシャロを連れてきたのは屋敷の中の一室だった。
壁には何着かの衣服がかかっている。

シャロ

ここは?

マリア

今日からあなたが過ごすお部屋です。

シャロ

はぁ……

シャロは住み込みで働くことは承知であったが、まさかこんなに良い環境だとは思っていなかった。

その表情を見てマリアが少し表情を緩めた。

マリア

うちではメイドを含めて家族です。
レイモンド家代々の教えです。

シャロ

なるほど……
それで……

マリア

では、荷物を置いたら行きますよ

シャロ

行くって……仕事にですか?

マリア

いいえ。
各場所に挨拶です。
どこで働くかは適性を見てからですね

シャロ

分かりました。

そう言ってシャロは、荷物を部屋の隅にまとめはじめた。
その様子をマリアは何も言わずに見守っていた。

シャロ

準備できました!

マリア

では行きましょうか

そう言ってマリアは扉を開けた。

第1話:彼女の名は

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