3月26日

……………………

ねぇ、君は何故そんなに落ち込んでいるの?

………みんなのことが思い出せない。

……そっか、それはつらいね。

………………

私ね、弟がいるんだ。

君と同じくらいの年で、いじっぱりで、生意気で、臆病で、どうしようもない弟。

君は家族のことも覚えてないの?

………うん。

………なんであんたはここにいるの?

弟を探してたんだ、

ほんの少し様子を見たかったんだけど
もうここにはいないみたい。

諦めて帰ろうとしたら落ち込んでいる君がいたんだぁ

私はアヤメっていうの
君は?

…………桜太

うんうん、いい名前してるよぉ

よし、きーめた!君の面倒をみてあげる!

……俺はべつにいい…

私のことはおねーちゃんでいいよ!

…………だ

ん?

余計なお世話だ!

……!

…俺はどうせ今日のことすら憶えられない。

…………

それでも……

それでも君は生きているんだもの!

それだけでもとても素晴らしいことを私が教えてあげる

………………

ほら、行こ!ここじゃ気がめいるよ!

…………!!

そう、たしかに手を掴まれた。

しかし実際に手が触れ合うことはなかった。

アヤメの手が俺の手をすり抜けたのだ。

………あ

そういえば、私お化けだった

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