私の通っている高校には、序列がある。

序列の付け方は人気、人望、学力、運動能力、そして顔面偏差値。

序列によって動く隔離された世界。

そんな世界で私は生きている。

藤山高校2年生 序列 (前回順位)
1位 児玉泰明 (1位)
2位 松崎絢香 (168位)
3位 早見千裕 (2位)
4位 上田匠  (5位)
5位 山本拓也 (3位)
6位 三宮豊  (7位)
7位 松本侑斗 (9位)
8位 長嶺和博 (6位)
9位 田島勇太 (11位)
10位 五十嵐隼 (8位)

藤山高校全学年 序列 (学年)
1位 蓮見蓮   (3)
2位 児玉泰明  (2)
3位 桐山晃   (3)
4位 蓮見悠花  (3)
5位 松崎絢香  (2)

高校二年の始業式。

同時に今年の序列順位発表日でもある。
ほんの少しの緊張と共にあたし、松崎絢香は廊下の序列表の前に立つ。

今年のあたしの序列は、二位。

よかった。

握り締めていた手をほんの少し緩め、体の緊張も少し解く。
次に気になっていた一位に目を向けた。
そこには去年と変わらず児玉泰明という文字があった。
三位に早見千裕、四位に上田匠、五位に山本拓也。
小学校からの友達がそこに名を連ねる。

今年はみんなで一緒にいられる。

そう思うと顔がほころぶ。
そこまで確認してあたしはやっと一息ついた。

千裕

あーやーかーちゃん

聞きなれた声に振り向くと、楽し気な顔が見えた。

彼は、現在序列三位の早見千裕だ。
彼は人垣を抜けて、あたしの元へやってくる。

そして、序列表を指さして笑いかける。

千裕

やったじゃん。
返り咲きおめでとう。
去年は頑張ったもんな

そう言い、彼はあたしの頭に手を乗せた。

それが嬉しくて笑顔を返す。
去年一番支えてくれた人。
感謝してもしきれない。

絢香

ほんとありがとう。
安心したとこ

そう言って、周りを見渡せば祝福してくれるような視線にいくつもぶつかった。

あったかい空気にちょっと嬉しくなって、千裕を見上げようすると、ざわめきが一際大きくなった。

ざわめきに視線を移すと、第一位、児玉泰明の姿があった。

泰明

よう、絢香。
高位返り咲きおめでとう

複雑な気持ちになり、無言を貫く私。

そんなあたしを見て、泰明がこちらに向かってきた。
道がモーセの海割りみたいになる。
力の象徴だ。
あたしより力のある人。

さっきの千裕とは違い、すんなりとこちらへ向かってくる。

泰明

今年も…仲良くしよう、な

彼はそう言って右手を差し出した。

私は右手を無視して、笑顔で答える。

絢香

ありがとう。
少し心配してたんだけどね。
あなたも一位防衛おめでとう。
全学年序列も二位なんだってね。
そっちもおめでとう

嫌そうな顔をした泰明。

気に入らない。
そういうとこほんとに気に入らない。
廊下で騒いでいると、先生が教室へ入るように促す。
先生に言われたとおり教室へみんなが移動し始める。

またね、とあたしもその流れに乗って教室に帰ろうとした。

泰明

なぁ……

声をかけられ、立ち止まり振り返る。

バツの悪そうな顔をして彼は言った。

泰明

去年は悪かったな

ホームルーム:始まりの季節

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