今日は俊之が隆行の家庭教師をする日である。

それも昨日、
隆行は彼女の家に行っていたはずであった。

だから俊之は家庭教師の事よりも、
そちらの方が気になっている。

そして俊之が絵美の家にやって来た。

俊之

こんばんは。

絵美

いらっしゃい。

いつもの様に絵美が出迎えに来た。

二人は廊下を歩いてリビングの横を通る。

リビングには絵美の母が居た。

俊之

こんばんは。

絵美の母

こんばんは。
今日もお願いね。

俊之

はい。
絵美はどうする!?

絵美

どうしようかな~。
する事がないから私も勉強をしよ。

俊之はいつも通り、そのまま隆行の部屋へ向かう。

絵美は自室へと入った。

そして俊之が隆行の部屋へ入る。

俊之

うぃ~っす。

隆行

俊君、いらっしゃい。

俊之

いきなりだけど、どうだった?

俊之はそう言いながら、隆行の対面に座った。

隆行

それが、

隆行が言葉を詰まらせる。

俊之

どうした?

隆行

駄目でした。

俊之

駄目って、何が駄目だったのよ!?

隆行

俺、情けないです。

俊之

ふふふ。

隆行

なんか、異常に緊張を
しちゃったみたいで。

俊之

そか。

隆行

俺の勘違いなのかもしれないけど、

俊之

うん。

隆行

香織がそれを
待っている様な感じがして。

俊之

うん。

隆行

そう思ったら、金縛りになった様な
感じになっちゃって。

俊之

そか。

隆行

結局、Hどころか
大した話も出来ないままで、

俊之

うん。

隆行

いつもは
そんな事はないんですけど、

俊之

うん。

隆行

香織も全然、話をしてくれなくて。

俊之

そか。

隆行

時間だけが、
ただただ過ぎていっちゃって。

俊之

うん。

隆行

今日、顔を会わせても気まずいだけで。

俊之

うん。

隆行

本当に自分が情けなくて。

俊之

そか。

隆行

準備万端で行った俺が
本当に馬鹿みたいで。

俊之

ふふふ。

隆行

俊君はどうだったんですか?

俊之

俺か!?
俺は絵美の事を想っていた時間が
長かったからねぇ。

隆行

そうなんですか!?

俊之

小学校1年生の時から、
ずっと絵美の事が好きでさ。

隆行

へぇ~。

俊之

それで高校に入ってから、
告白をしたんだからね。

隆行

そりゃ、長いですね。

俊之

だもんだからさ。

隆行

うん。

俊之

交際をOKして貰った時も、
初めてキスをした時も、
初めてHをした時も、

隆行

うん。

俊之

全部、ただただ嬉しくて嬉しくて、
緊張なんてしている余裕が
なかったって感じかな。

隆行

そうなんだ。
でも、余裕がないから、
緊張をするんじゃないんですか?

俊之

まあ、隆行の場合は、
そうだったのかもしれないけどさ。

隆行

やっぱり、そうですよね。

俊之

この間も言ったけど、

隆行

うん。

俊之

そんなに焦らなくて
いいんじゃないのかな。

隆行

そうなんですけどねぇ。

俊之

何よ!?

隆行

俺、やっぱり、
したくて、したくて。

俊之

あははは。

隆行

もう香織を普通に見る事が
出来なくなっちゃったみたいで。

俊之

そか。

隆行

どうしたら、いいんですかね?

俊之

そんな事を言われてもな~。

隆行

そうですよね~。

俊之

チューもまだなんだろ!?

隆行

はい。

俊之

先ずは、そっからだろうな。

隆行

そうなりますかね。

俊之

それと、

隆行

はい。

俊之

何か目標みたいなもんを
設定したら、どうかな!?

隆行

目標ですか!?

俊之

俺の場合なんだけど、

隆行

はい。

俊之

絵美の方から好きだって、
言って貰うってのを
目安にしていたんだ。

隆行

そうなんですか!?

俊之

それでHをしようって
決めたんだけどね。

隆行

へぇ~。

俊之

それまではさ。

隆行

うん。

俊之

俺の方から好きだって
言う事はあっても、絵美の方から
ってのはなかったんだ。

隆行

なるほど。

俊之

そうやって、
目標みたいなもんを設定して、
それをクリアする事でさ、

隆行

うん。

俊之

一皮剥けるっていうか。
ね。

隆行

俺は何を目標にすれば、
いいんだろうな~。

俊之

それは自分で考えないとな。

隆行

はい。

俊之

まあ、それも焦る必要はないよ。

隆行

そうなんですか!?

俊之

意識をそっちに持って行く事で、
Hをしたいって欲を抑える
意味もあるからさ。

隆行

なるほど。

俊之

ゆっくり考えて、ちゃんと
自分で納得が出来る様にね。

隆行

分かりました。

俊之

それにしても、俺からしたら、
中坊でそういう悩みを持てるだけで
羨ましいよ。

隆行

ははは。
そんなもんですかね。

俊之

何!?
なんか文句でもあんの?

隆行

いや、文句なんてありませんけど、
俺は今が苦しくて。

俊之

まあ、そうだよな。

隆行

羨ましいとか言われても、
ピンときませんよ。

俊之

ふふふ。

隆行

もう少し詳しく、俊君の話を
聞かせて貰ってもいいですか?

俊之

いいよ。
今日はもう勉強は無しだな。

隆行

いいんですか?

俊之

たまにはいいだろ。

隆行

俊君が
そう言ってくれるんだったら、
俺の方は構いませんよ。

俊之

ただ、
ちょっと待っていてくれるか?

隆行

何ですか!?

俊之

絵美の様子を見てくるから。

隆行

俊君、姉貴の事、
本当に好きなんですね。

俊之

生意気を言っているんじゃねーよ。

隆行

すみません。

俊之

そんじゃ、ちょっと待っていてな。

隆行

はい。

俊之は立ち上がって隆行の部屋を出て、
絵美の部屋へ行った。

15分程、経ってから、
俊之が隆行の部屋へ戻って来る。

そして俊之は隆行から絵美との事を
根掘り葉掘り訊かれた。

俊之はそんな隆行に対して、
事細かに話をして聞かせる。

家の外では蟋蟀の恋の話も
盛り上がっている様だった。

エピソード26/目標設定

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