【11】



























真っ暗だ。
どうしたんだろう。




ああ、そうだ。

ボクは
ファイアバードに攻撃されて

シャーッ!


……それで……

食べるの?

ごめん。
でもその卵が必要なの

食べないで



ホントに、ごめん……


























わあ!

いきなり

視界いっぱいに
火の海に沈めても生きていそうな
顔が現れた。

……脅かさないでください……


このふたりがいるということは
ここは、森?


ってことは

逃げ延びることができた、の?

安堵のあまり腰が抜けて
ボクは座り込んでしまった。

クッキーひとつ手に入れるのが
ここまで大変だとは。






一回りも二回りも
大きくなって帰って来い、って
先生が言ってたけど

お菓子持って帰るだけに
大袈裟だと思ってたけど


こういう意味だったのか。





滅多にない経験だけど
できれば経験したくない。









……しかし

もう少し普通の
登場の仕方はできないのだろうか
このふたりは。

硬いことは言いっこなしだ

言いっこなしだ

硬いと言えば

クッキー

それも!

200℃でこんがり焼いたやつ!

つまり!

……


……なんとかして下さい。

と言うのは置いといて

置いとくの?

意外だ。

絶対また
延々と喋られると思ったのに。





もしかして



息も絶え絶えになってまで
卵を持ち帰ったボクに

うわごとで謝り続けるボクに



絆されて……






では第1回口頭弁論を始める

……はい?

原告は前へ

……

!?

何故ここにファイアバードが!?

さて原告。
あなたは被告に卵を盗まれた、で相違ありませんか?

ありません

え!? ちょ、ちょっと

お静かに

で、その盗まれた卵はこれで間違いありませんか?

はい

では判決を下します

ちょっと! ボクの意見は無し!?

被告人を卵とミルクと小麦粉と混ぜて200℃で焼かれる刑に処す!

ちょ、

無視するな――!!








そこに声が響いた。

ボクの後ろから
ジンジャーガールが現れる。

よかった、相方はまともだ

ボクの言うことは聞いてくれなくても相方の話なら聞い

ちょっとでも期待したボクが悪かった

では改めて!

待て

お前は知らんだろうが、あの後、山が噴火した

えっ?

巣は直撃を受けて火の海に沈んだ

……

お前が盗みに入らなければ全て失っていたかもしれん。
だから盗みに入った罪は問わないことにする

えー

えー

「えー」じゃないわ!
お前たちは「異議あり!」がやりたかっただけだろう!
無駄に足止めしやがって!!

卵を渡すことができないが、命の恩人だ。
これをやろう

ファイアバードは
なにやら高そうな石を寄越してきた。

……邪魔したな










ファイアーバードはそれだけ言うと
卵を掴んで飛び去って行った。



























めでたしめでたし

……で、クッキーは

ないよー

そんなことだろうと思った




これ以上ここにいる理由もない。

ボクは石をしまうと
森を後にした。









(持ち物にハートの宝石が追加されます)

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