唐津と須藤はかく語りき。
唐津と須藤はかく語りき。
須藤は激怒した！
……
何で肉まんに
酢醤油がついてないんだ！！
コンビニの店長に言えよ
第二話 買い食いの光景
この日の唐津と須藤
唐津聡（からつ さとし）
県立N高校一年生。
コンビニに行くと、
まずドリンクコーナー
そしてお菓子コーナーと渡り歩き、
新製品をくまなくチェックする。
須藤政信（すどう まさのぶ）
県立N高校一年生。
コンビニに行くと、
まず雑誌コーナーで立ち読みを始める。
でも成人向け雑誌は恥ずかしくて読めない。
コンビニ近くの公園。
下校中の二人はベンチに陣取り、
買った物を思う様消費していた。
自称激怒中の須藤は、
一口で肉まんを半分齧りとる。
新発売の梨サイダーを飲みつつ、
唐津が口を開く。
須藤家のルーツって九州なのか？
（もぐもぐ）
ん？あー、
母方の祖母ちゃんちが福岡だな
博多美人だぞ
それは祖母さんのことか？
母親のことか？
どっちにしろ何で俺に推す……
あと食いながらしゃべるな
（もごもご）
推してねーよ
（ごっくん）
ところでなんでわかったんだ？
そんな話、したことあったっけか？
コンビニの肉まんに
酢醤油を添える文化は
九州北部独特のものだからだ
まじで？！
心底驚いた様子の須藤。
そうか
祖母ちゃんちの近所だけだったのか……
家で食う時はもちろんかけるし
必須アイテムだと思ってた
まあ
全国共通だと思ってることが
実はローカルでした
なんてことは結構ある
唐津は飲み終えた梨サイダーの蓋をキュッと締める。
例えばこれとか
そう言って唐津が半透明の袋から取り出したのは、
カステラで餡子を挟んだ菓子だった。
シベリアがどうかしたのかよ
これは全国区じゃない
基本、関東エリアのものだ
まじで？！
この日二度目の表情を見せる須藤。
おそらくお前の祖母さんは
存在すら知らんだろうな
そうなのか……
今度祖母ちゃんち行く時
土産に持ってってやろ
それからお前
ニワトリのことを
"ぽっぽさん"って言うよな
え？ 言うけど
それは地域ローカルどころの話じゃない……
須藤家ローカルだ
まじでか？！！
思わず立ち上がる須藤。
唐津はシベリアを齧って続ける。
普通
ぽっぽと言えば鳩だろう
いやニワトリだろ……
じゃないの？
じゃないな
他の誰に言っても
おそらく通じんぞ
うっわー！
これはいかん！
すぐに帰って妹に教えてやらねば……
我が家だけの言語が存在したとは！
コンビニ袋を唐津に押し付け、
須藤は鞄を抱え上げた。
感謝するぞ
我が友セリヌ……ぬ？
セリ・ナズナ？
それじゃ七草だろうが
こうして、何事も無く須藤は帰路を激走するのだった。
