鈴石茜

うーん、綺麗だなあ

野木ののか

二次元の女子よりも、かの?

鈴石茜

ののか先輩!?

鈴石茜

あれとこれとは別物です

野木ののか

ほ、ほ、ほ、そうか……私にはよく分からぬ『じゃんる』のようじゃ

野木ののか

にしても、桜、きれいじゃの

鈴石茜

はい。先輩は帰省中ですか?

野木ののか

ああ、そうじゃ。

野木ののか

卒業おめでとう、茜

鈴石茜

ありがとうございます

野木ののか

進路は……どうなったのかの?

鈴石茜

ああ……

鈴石茜

無事、第一志望に

鈴石茜

東京にあるデザイン系の専門学校です

野木ののか

それは、おめでたいのぅ。

鈴石茜

はい

野木ののか

でも東京となると……一人暮らしということになるかの?

鈴石茜

まあ……そうですね

野木ののか

やはり……寂しいか?

鈴石茜

いえ、大丈夫です

野木ののか

ほう……迷いのない返答じゃの

鈴石茜

だって……

鈴石茜

二次元よりもずっと、近いですから

野木ののか

…………?

菊田実

おい、のろま! こんなところにいたのか!

野木ののか

おお、悪いのう。ちょっと茜を見つけたから……

菊田実

まったく、折角迎えに来てやったんだからちゃんと待ち合わせ場所にいろって何度言えば分かるんだ!

野木ののか

それは、申し訳ないことをしたぞよ。

菊田実

全然反省する気が見られない……

鈴石茜

隊長

菊田実

お、茜か。卒業おめでとう

菊田実

一年間、生徒会長もお疲れさまだな

鈴石茜

ありがとうございます

鈴石茜

そうだ、隊長

菊田実

ん?

鈴石茜

私の恋は無事に成就しましたよ

菊田実

な……っ

野木ののか

おお、茜は恋をしておったのか!?

菊田実

こいつ……気づいていなかったのか……

野木ののか

お相手は誰かの?

鈴石茜

ののか先輩の知っている人です

野木ののか

…………?

鈴石茜

頑張ってくださいね、隊長も

菊田実

う、うるせえ

鈴石茜

ははは、じゃあ私は今から待ち合わせなので

野木ののか

おう……ではまた、帰省のタイミングが合えば会おうかの

鈴石茜

はい

相変わらずの二人だなあ……先輩たちも早く、付き合えるといいんだけど

鈴石茜

ま、隊長があんな調子だしなあ

伊納アスナ

あ、生徒会長殿

鈴石茜

アスナちゃん

伊納アスナ

……今から、デートですか?

鈴石茜

ま、まあそんなとこかな……

鈴石茜

アスナちゃんは……

山吹真琴

王子様、桜がきれいですわね

鈴石茜

……デート?

伊納アスナ

違います

山吹真琴

王子様……このまま二人でこの桜の中へ埋もれてしまうことができたら幸せですわね

伊納アスナ

却下です

山吹真琴

ふふふ、冗談ですわ。ところで私たちが今後お付き合いをしてゆくという話は……

伊納アスナ

そんな話は聞いていません

山吹真琴

なんと……体育大会では愛の共同作業をしたではありませんか

伊納アスナ

リレーのアナウンスは楽しかったですがそれを『愛の共同作業』とは呼びませんよ

鈴石茜

……大変だねえ

伊納アスナ

まったくです

山吹真琴

そうだ、私、今年度から生徒会役員になることに決めました

鈴石茜

え……

山吹真琴

そうすれば、王子様ともっと一緒にいられますでしょう?

鈴石茜

ゆ、歪みない……

高屋敷梨華

真琴!! こんなところに!!

山吹真琴

せ、先輩……

高屋敷梨華

次のコンクールに向けて作品制作を進めなければいけないと言っている矢先に抜け出すんだから……

山吹真琴

すみません……ですが、窓から王子様が見えて……

高屋敷梨華

アスナ……っ

伊納アスナ

私は何も悪くはなくないですか?

高屋敷梨華

はあ……でも、真琴が生徒会役員になりたいって言うなら背中を押すわ

伊納アスナ

何故ですか……?

高屋敷梨華

生徒会役員がいた方が行事の予定もすぐに手に入るし、なにより資金が手に入るかもしれないじゃない

高屋敷梨華

今の放送部の目標は指向性の高いコンデンサーマイクの確保よ!

鈴石茜

生徒会に各部活動の部費をどうこうできる権利があるのかどうなのか……

鈴石茜

でもまあ、生徒会をやるなら応援するよ

伊納アスナ

そうですね……真面目に活動をするならば次期生徒会副会長として応援しましょう

山吹真琴

ありがとうございます!

鈴石茜

じゃあ、私はこれで

伊納アスナ

はい……あ、東京へ行っても連絡ください!

鈴石茜

勿論!

次期生徒会も……安定かな

鈴石茜

ま、真琴ちゃんもなんだかんだで上手くやっていける子だよ……多分

教師

お、鈴石じゃないか

鈴石茜

先生!?

鈴石茜

何やっているんですか……?

教師

何って……ランニングだ。一応陸上部顧問だからな。体力をつけなければ

鈴石茜

なるほど……

教師

鈴石はいつ東京へいくんだ?

鈴石茜

明日です

教師

……結構急だな

鈴石茜

荷物とか運ばなければならないんで

教師

なるほどなあ……

教師

ま、頑張れよ

鈴石茜

はい

教師

あと、一年間お疲れさま

鈴石茜

先生からそんな言葉が聞けるとは……

なんだかんだで、いい先生だったんだなあ。

鈴石茜

さて、そろそろ急がないとな……

東海竜弥

あ……

鈴石茜

あ、竜弥

東海竜弥

爆発しろ

鈴石茜

それ、言いたいだけだよね!?

鈴石茜

まったく……竜弥は結局、留学するんだっけ?

東海竜弥

いや……しない

東海竜弥

俺は身体も弱いから渡米は無理……だから日本国内でトップを狙う

鈴石茜

へえ……竜弥って前と変わったような気がするな

東海竜弥

ふっ

東海竜弥

…………そう?

鈴石茜

うん。活動的になった

東海竜弥

……影響を受けた

鈴石茜

……? なんの?

東海竜弥

……さあ

鈴石茜

……ふうん?

東海竜弥

じゃあ、俺はこれで

鈴石茜

あ、竜弥、今までありがとう!

東海竜弥

……うん

東海竜弥

あと

東海竜弥

おめでとう

鈴石茜

……ありがとう

鈴石茜

今のはあれか……卒業に対するおめでとうなのか? それとも私と彼のことなのか……?

鈴石茜

まあいいや、急ごう……

こうしてみんなに遭遇していると、なんだかこの一年間を思い出すようだ……

鈴石茜

結果的にいい一年間だったなぁ

佐島亮

それはよかったです

鈴石茜

あ……ごめん、待ってた?

佐島亮

いえ、今きたとこです

佐島亮

茜先輩

鈴石茜

それはよかった……亮くん

佐島亮

…………

鈴石茜

…………

佐島亮

…………

鈴石茜

…………

名前呼び恥ずかしい!!!

佐島亮

あ、えっと、桜きれいですね

鈴石茜

う、うん、まあ……

佐島亮

……明日から、東京なんですね

鈴石茜

……うん

鈴石茜

ごめんね、折角付き合ったのにすぐに遠距離になっちゃって

佐島亮

それは平気ですって言ったじゃないですか

佐島亮

だってこれは、鈴石先輩が夢を追いかけたからこその結果でしょう?

佐島亮

だったら、応援するのが当然です

鈴石茜

……ありがとう

佐島亮

それにこの前も言いましたが

佐島亮

遠距離恋愛は二次元よりもずっと近いんです!

鈴石茜

あ、うん。この前も力説していたね

佐島亮

二次元の美少女は画面から出てこないし、声をかけても答えてはくれません

鈴石茜

でも、現実の恋人は会話も一方通行じゃなければ、たまには画面から出て会うことだってできる

佐島亮

今まで僕らがぶつかってきた壁に比べたらこんなの幸せな方です!

鈴石茜

そうだね!

現実? なにそれ美味しいの?
って、思ったこともあった。

確かに現実は辛かったり報われなかったり、いろんな困難もあるけど

その倍くらいの幸せだってやってくる

鈴石茜

現実だって、捨てたものじゃない

佐島亮

ま、今日は暫く会えないことも考えてデートを頑張りましょう

鈴石茜

デートを頑張るってなんだよ……

鈴石茜

まあ、まずは買いたい漫画の続巻が出たから本屋に行くよ

佐島亮

あ、僕欲しい期間限定のグッズがあるんでメイトも行きたいです

鈴石茜

いつも通りだね……

佐島亮

いつも通りが一番です

こうやって好きな人と隣を歩ける……それだけで、幸せな気分になる

今まで気にしなかったことや知らなかったことを沢山経験できた

そして、これからも経験していくんだろう

鈴石茜

亮くん

佐島亮

なんですか? 茜先輩

鈴石茜

私がいないときに浮気とかしたら許さないからね

佐島亮

大丈夫ですよ

佐島亮

例え浮気するとしてもそれは二次元の妹なんで!

鈴石茜

ま、まあそれなら安心だね!!

現実? なにそれ美味しいの?

そう聞かれたら、今はもう素直に応えられる。

鈴石茜

美味しいです……ってね

だってこんなにも、楽しいんだから。

そろそろ現実を見る時間のようで。

美味しいです!!

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