シーナが玉座に身を据えたのが3年前。
それは彼女のお父様が長年続く戦争の戦火に巻き込まれ、命を落としたからである。
お父様には兄弟はおらず、彼女の母親は彼女を産んですぐ病気で死んでいる。子どもも彼女以外いないため、血縁者は彼女一人だった。
周りの貴族は「女性に国を任せるなんて」と自分が次の王だと国の中でも争い事が勃発しそうになっていた。
そんな中、お父様の遺言状が見つかり彼女が王様ならぬ女王様として君臨することとなった。

お父様の遺言状には「……娘は女王様として、必ず成し遂げる」と一言添えられていただけだった。

シーナ

……平和な世界ではつまらぬな

彼女がこの国にもたらした平和は、彼女にとってはつまらないものだった。毎日、同じに感じる公務を繰り返すばかり。

でも、それでも、彼女は女王様として進み続ける。

娘は女王様として、必ず成し遂げる。

確かに先代のお父様の言う通り、彼女は彼女一人の手腕で長年続いていた戦争に幕を降ろさせ、世界に平和と安心をもたらした。
今では「天才」と呼ばれていて、彼女を知らない人は誰もいない。
「彼女は、神様だ。世界平和をもたらした神様だ!」と崇められるほどであった。

そんな彼女は、遠くの国の王様からでさえも「彼女と婚約したい」と求婚されていた。これは彼女の手腕を我が物にしたいという我欲ばかりであったが、彼女はそんな事に目も向けず
「私は誰とも婚約するつもりはありません。そして私が死んだ後、次の代として玉座に座る人も決まっています」
といつも言うばかり。ただ、誰を次の王様として推薦しているのか誰にも教えないままで……。

毎回求婚を断るという噂だけが国に知れ渡ったせいか、彼女が治める国の住人からは「恋しない女王様」とまで呼ばれていた。

これは、そんな彼女が女王として君臨する前、そして女王様として未熟だった頃のお話。

そう、まだ「天才」になる前のお話である。

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