悟のバカっ!!!

灼の叫び声に、その場にいた全員が目を丸くした。

バカ!バカ!バカ!
悟のバカぁ!!!

ちょ、ちょっと灼落ち着いて……

落ち着けないって!!
悟は馬鹿だと思ってたよ!
思ってたけど、ここまでとは思わなかった!!

灼……

いままで全く気を使ったことがないクセに!
変なとこだけ気を使って!!
今までも十分傷ついてた!
今更何を遠慮してんの!?

灼がまくしたてるように言葉を並べる
悟をはじめとした面々はその言葉をただ聞くしかなかった。

あれだけへこんで、自分が嫌になったりしたけど
それでもまだ悟のことが好きなの
今さら傷が1つ増えたくらいじゃ別れたりしないし、悟の前からいなくなったりしない

灼のまっすぐな視線に悟は言葉を失った。

いままで自分がしてきたことが灼を傷つけなかったとは思っていない。
しかし、相手から嫌われないようにと思っての行動でその人を傷つけていては元も子もない

本末転倒とはまさに事のことである。

これだけ言ってもまだわからないかな?

灼の茶化すような一言で悟の心の中で閉ざしきっていた何かが解き放たれるような音がした。

灼……ごめん……

分かったならよし

似合ってるよ……その髪
とても綺麗だ

ありがと
その言葉待ってた

二人の間に弛緩した空気が流れる。
まわりで見ていた3人にもほっとした様子がうかがえた。

よかった……

浩太

なんだかんだでこいつらお似合いだし、元通りおさまるんだよなぁ

芹羽

元は私のせいなんだけどね……
よかった……

三人の様子を見た灼は何かを思いついたように口を開いた。

そういえばさ。実は今日あるものが変わってるんだけど、何が変わったか分かる?

そう言いながら灼は両手を広げてくるっとその場で一回ターンした。
悟を除く3人が顔をしかめる。

芹羽

え?
どこ?

全然わかんない

浩太

この二人が分かんないのに分かるわけないな

その中で悟だけが黙って灼を見つめている。

わかってるんでしょ?悟
言ってみてよ
大丈夫

……ネクタイ

ネクタイ?

昨日のと違う。
今日おろした奴でしょ?

悟が指摘するとそれ以外の4人がポカーンとした顔をする。
このネクタイは学校指定のもので、ガラもすべて同じものなのだ。

すごいや……ホントに分かっちゃうんだ……

灼が感心したように声を漏らす。
悟はうつむきがちになりながら灼の反応をうかがう

私はすごいと思うよ。

あともう一つあるよ

満足げな灼に水を差すように悟が言う。
灼の頭にもハテナが浮かぶ中悟が口を開いた。

その下着もいつもと違うよね?

はぁっ!?
な、何言ってんの!?

いや、新しくなったところって言ったから

そんなこと分かっても言わないでしょ!?

灼が悟の肩をつかんでブンブン揺らす。

悟のやつ……ホントに治すべきは敏感さじゃ無くてモラルとかじゃねぇのか?

かもしれないわね……

芹羽

私もあんな風にデリカシーないこと言われたのかもしれないって思っちゃった……

ギャーギャー騒ぐ二人を横目に、三人はまだ世話が焼けるのかとそろって嘆息した。

The End...

最終話:そして二人は……

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